(※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ大丈夫と思いたい。でも、知っておけば準備できる。」高齢者認知症外来・訪問診療を長年行ってきた専門医・近藤靖子氏は、書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』のなかで「高齢者・認知症患者が抱える熱中症のリスク」について解説しています。

圧倒的に高齢者が多い…「熱中症のリスク」

2020年8月は全国的に酷暑の日が続き、東京では熱中症で救急搬送されたり死亡したりする人が前年よりかなり増加しました。読売新聞の記事によると患者は高齢者が圧倒的に多く、90%以上が屋内で発見され、エアコンがなかったか、あっても使っていなかった場合が多かったそうです。

 

高齢になると、いろいろな感覚機能が低下してきます。視覚、聴覚の低下はごく日常的に知られており、年を取れば眼の調節機能が衰えて老眼鏡が必要になったり、耳が聞こえにくくなると補聴器が必要になったりすることは一般的にも理解されていると思います。皮膚感覚もこれらと同様に衰えていき、暑さや寒さを感じる温度覚も低下します。

 

65歳以上の高齢者では、温度の変化を感じる感度が低下し、寒い時に震えて熱を発生させたり、暑い時に汗をかいて体温を下げる機能が遅れたり低下したりするそうです。

 

高齢者自身が、このような加齢による生理的な変化を理解し、「自分は熱中症のリスクが高い」ということを自覚すれば、水分摂取を十分に行ったり、適切にエアコンを使ったりすることによって、脱水症や熱中症はかなり予防できると思います。実際、大部分の元気な高齢者の方はそういうふうに心がけ、実行されていると思います。

 

けれども高齢者の一人住まいや高齢者世帯では、自分ではそういうリスクが高いことに気づかず、適切な対策を取れないことがあります。自分では必要性を感じにくいので、無理もないことかもしれません。

 

そこで、若い世代の家族などが訪れたり電話をかけたりして、熱中症を予防するようにアドバイスをしてもらうのがよいと思います。

 

そして、きちんと対応ができているか確認することが大切です。たとえ「わかった」と返事しても、きちんと理解できていなかったり、忘れてしまったり、またエアコンの操作が苦手だったりすることがあるので、そういう場合には見守りや介護サービスが必要になってきます。

 

高齢者が認知症になり、しかも病気が進行してくると、自分で季節にあった服を選べなくなってきます。私たちのクリニックで診察する高齢者の方々も、夏に厚着をしていることがしばしば見られます。気温が30度以上の真夏日でも、厚めの下着をつけていたり、腹巻を巻いていたりして汗をかいています。診察時に、厚着であることを指摘しても、付き添いのご家族は、「注意しても聞かないのです」と答えることが多いです。

 

老人施設に入っている高齢者でも、夏の厚着はよく見られます。「暑いので薄着にしましょう」と言うと、その場では頷くことが多いのですが、職員の話によると、脱ぐように言っても実際はなかなか聞いてくれないようです。

 

対策として夏には冬服を片付けるようにと施設職員にアドバイスすると、今度はその冬服を探して施設の外に出ようとするので、なかなか思うようにはいかないようです。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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