病院経営は、営利を目的とした企業の経営とは多くの点で異なり、「全体最適」の視点が必要になる。医療管理職を目指すひとのために、経営学の基本的な知識を理解しやすく解説します。

経営の定義

経営=金儲けをイメージするので、これまで医療の現場で経営を語ることは禁句とされてきました。それではそもそも経営の定義とはなんでしょうか。会社などの営利企業の目的は株主価値の最大化であり、経営とは「資源を活用して付加価値を作り出す活動」と定義できます。

 

営利基準(お金儲け)が有利な点は

 

・営利はただ一つの基準に向けて組織全体を動員できる
・成果とコストの量的分析が可能
・多くの事象展開を一つの基準にまとめることが可能
・営利基準によって権限委譲が可能

 

などが挙げられます

 

※参考図書:Anthony,R.N. and D.W.Young, Management Control in Nonprofit Organizations,4th Ed,Irwin,1988.

 

いわば利益(お金という単位)=シンプルな基準と言えます。一方、非営利組織である病院や行政組織、大学は利益を上げることのみがその目的でないがゆえに、運営上の指標が明確でなく、営利組織に比べると運営が難しくなります。非営利組織においては利益が多い=経営の成功とは言えないからです。

 

そこで、非営利組織における経営の定義としては「人を動かして構想を実現させること」とするのが相応しいと考えます。本書では経営とは「すべてのステークホルダー(stakeholder)を幸福にするための手段」と定義しようと思います。

 

ステークホルダーとは利害関係者の意味であり、企業で言えば株主、投資家、顧客、仕入れ先、従業員、そしてその家族、さらに大きく捉えると地域や社会全体です。

 

一方、病院では医師、 看護師、薬剤師、栄養士などの医療専門職、事務職員に加えて、医療機器や製薬企業、患者、そしてその家族、地域や社会全体が含まれます。したがって、病院経営会議では収益や稼働率、病床稼働率の議論ばかりではなく、これらのステークホルダーをどのようにして幸福にするかについて議論すべきです。

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本記事は、2017年12月刊行の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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