(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症高齢者を得意とするホームは、問題行動に対する知見が高く、問題行動をさまざまな経験値でねじ伏せていくことができるホームです。では医療的な処置やリハビリが得意かというとそうではないといいます。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者の小嶋勝利氏が著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)で解説します。

老人ホームには介護の得手不得手がある

私は、以下のようなやり取りがあって苦労した経験があります。

 

本人の強い意志で絶食を宣言していた認知症入居者を主治医の働く精神科の病院で受診させたところ「内科の先生がいないため、入院治療はできない」と言われ、それでは、ということで、今度は内科に強い病院で受診したところ、「医師とコミュニケーションがスムーズにとれない認知症高齢者を診ることはできない」と断わられ、家族とともに、途方に暮れたことがありました。

 

高齢の奥さまは、このままでは、主人が死んでしまうと嘆き悲しみ、大騒ぎをしていたことを思い出します。

 

結局、偶然、救命救急センター出身の派遣看護師がホームに勤務していたため、その看護師が、医師の指示があれば、私が点滴処置をやります、と申し出てくれ、嫌がる本人のことなど、まったくおかまいなしで、点滴処置をしました。

 

本人も、最初こそ、力ずくで抵抗していましたが、この看護師が美人だったことも手伝い、しばらくすると、すべてを受け入れ、点滴が終了するまでの3時間程度は、看護師が見守る中、おとなしくベッドに横になって点滴治療を受けていました。今にして思えば、本当に、認知症が原因で絶食をしていたのかどうかも怪しいところですが。

 

認知症高齢者を得意とするホームは、問題行動に対する知見が高く、問題行動をさまざまな経験値でねじ伏せていくことができるホームです。しかし、医療的な処置が得意かと言われれば、けっして得意ではありません。では、リハビリ的な行為が得意なのかといえば、それも得意ではありません。

 

したがって、加齢や他の病状の悪化などにより問題行動が消失し、ADLが低下した高齢者に対する対応が得意であるというわけではないのです。また、ベッド上で一日の大半を過ごす入居者の対応が得意だ、ということでもありません。それはまた違うスキルの話です。

 

したがって、原因が認知症だろうとなんだろうと、常時、車いす上で生活することが決まった高齢者の場合、身体的に不自由な高齢者を得意とするホームを探すべきなのです。考え方からすると、リハビリテーションに力を入れているホームということになるのではないでしょうか?

 

元気な認知症高齢者が車いす生活になるケースの多くは、転倒による骨折が原因です。

 

つまり、ケガにより足が不自由になります。ここで、重要なことは、本人は、足が悪くなったという状況認識がないため、利かない足で立ち上がって歩こうとするのです。これが、ふたたび転倒するリスクを高めます。再度転倒し、骨折、寝たきりへ、という流れです。

 

したがって、身体機能に関する専門家(いわゆるセラピストと呼ばれる理学療法士など)が配置されているホームに、転ホームをするという手間と時間をかけることが、私は、正しいホーム選びだと考えています。

 

そして、最後は寝たきりです。みなさんは、寝たきりになったらどうしますか? 私は、寝たきりになったら家族のもとに帰ればいいと思っています。何を馬鹿げたことを言っているのか! と思われる方も多いと思いますが、寝たきりは、在宅で訪問介護などのスキームを利用すれば十分に対応が可能な状態です。

 

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※本連載は小嶋勝利氏の著書『間違いだらけの老人ホーム選び』(プレジデント社刊)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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