60歳で保育士試験にチャレンジ
会社の幹部の方に謝ってからは互いのわだかまりも溶けて、次第に前向きに仕事ができるようになってきました。保育士の採用の仕事もますます忙しくなり、新規の保育園の開設に伴い保育士の採用が必要になると、保育専門学校で就活中の学生さんを保育園に見学してもらうため案内する機会も増えてきました。
学生さんに自社の保育の特徴を説明するなかで、保育のことを知らない自分が説明するのは表面的で、説得力がないと思えてきました。また園見学の時に学生さんと同行する機会が増え、現場の保育士さんの保育の素晴らしさを見るにつけ、自分も保育の勉強をして保育士さんのことを理解しようと思えてきたのです。
私は経済学部出身で保育の勉強をしたことがありませんが、思い切って保育士試験を受験してみようと思いました。
保育士資格は国家資格で、通常は保育の専門学校か大学の保育学科などで勉強します。しかし、幸いなことに、年に2回実施される学科試験と実技試験を受けて合格すれば誰でも資格を取ることができるようになったのです。
どうなるかわかりませんが、会社に内緒で休日や通勤時間を使って勉強しました。テキストは書店で買いました。しかし60歳になってからの勉強はなかなか頭に入りません。そこはチャレンジです。語呂合わせで覚えるなど工夫をしました。
あと、実技試験で音楽があり、大方の受験生がピアノ演奏で受験するのですが、私はまったく弾けません。しかし、よく調べてみるとギターでもいいことがわかり、こちらは学生時代に少し経験があるので、受験資格は何とかクリアできました。
そして迎えた学科試験ですが、9科目のうち2科目を落としてしまいました。幸い合格科目を持ち越せるため、半年後に2回目のチャレンジをして合格できました。学科試験合格の後は実技試験です。試験会場には300人ほど集まっていました。
ほとんどが20〜30歳台の女性で、シニア男性は私だけ。皆ピアノで受験ですが、私だけギター。直前まで練習しましたが、本番「どんぐりころころ」のFコードを失敗、そこは愛想でごまかし、試験官の方も笑っていました。まあシニアが頑張っているんだからというお情けだったのかもしれませんが、無事合格できました!
これを会社の人に言うと皆さんビックリされました。園長会議で社長から私が保育士試験に合格したことを発表された際は、園長先生方も驚かれてしばらく会議にならなかったそうです。
園長先生からのコメントで「私たちがやっている保育のことに興味を持ってくれ、真剣に理解しようとしてくれたことが何より嬉しいです」と言われたのを聞いて、本当に頑張って良かったなと思いました。
自分勝手に採用活動をしていた時に、友人のアドバイスがキッカケで相手に合わすよう心掛けてから、しばらく経ちましたが、少しは良い方向に進んでいるかもしれないと思えました。
・相手を理解しようと思い、行動することでそれが相手に伝わる。
髙橋 伸典
セカンドキャリアコンサルタント
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