田中角栄政権がわずか2年5カ月の短命に終わった最大の理由

田中角栄は首相就任後85日、中国を訪問して毛沢東や周恩来と会談し、日中国交正常化を実現しました。田中内閣は、安定した長期政権になるとみられていたが、わずか2年5カ月で崩壊しました。ジャーナリストの田原総一朗氏が著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)で解説します。

【オンライン開催(LIVE配信)】7/9(土)開催
投資家必見!銀行預金、国債に代わる新しい資産運用
ジャルコのソーシャルレンディングが「安心・安全」な理由

田中派は軍隊、福田派はサロン

■金権政治家を自認していた

 

それにしても、高等小学校しか出ていない田中角栄が、なぜ自民党内で頭角を現せたのか。そこで見逃せないのは、角栄の「金をつくる力」である。角栄は自力で井戸を掘ることができた。「井戸を掘る」とは、金を工面する方法を持っているということである。

 

自民党の総裁選には常に多額の金が動く。池田勇人や佐藤栄作の選挙資金は、すべて角栄がつくっていたと言われる。その働きがあって、角栄は池田にも佐藤にも気に入られていった。池田内閣では大蔵大臣に就任し、佐藤内閣では党幹事長になっている。

 

後に、私は角栄に対し、「あなたは金権政治家だと言われている。あるいは、汚れたハト派という人もいる」とぶつけたことがある。すると角栄は、こんな答え方をした。

 

「(「角福戦争」と言われた1972年の自民党総裁選を争った)福田赳夫は、東京帝国大学法学部卒業で大蔵省の局長にまでなっているので、政財官界に、福田が関わる団体が36もある。そしてどの団体からも金が集まってくる。しかし、僕が関係している会は2つしかない。一つは新潟県人会で、もう一つが二田小学校の同窓会だが、どちらも金にまったく縁がない。だから、井戸を自分が掘らなければならないのだ」

 

つまり、自分自身で金をつくるしかないということで、金権政治家になるしかない、と自認していたわけだ。

 

福田派出身でいろいろ波乱を起こした実力者の亀井静香が、角栄と福田赳夫との違いを次のように説明した。

 

「田中派は、率直に言えば軍隊だ。田中派の議員に対しては、田中さんが全員に政治資金を与えてくれるし、選挙に対しても、田中さんや直参議員たちが指導し、面倒をみてくれる。そして、当選回数を重ねれば順当に党の役員にも、大臣にもなれる。そのかわり、田中さんに忠実で、田中さんの言うことにはすべて従い、何とか田中さんの役に立とうと競う。

 

それに対して、福田さんは、政治資金もくれないし、選挙運動も自分自身でやらなければならない。そして、順当に党の役員になれるわけでもなく、大臣になれるわけでもない。自分が頑張らなければならない。田中派が軍隊であるのに対して、福田派はいわばサロンだ。だから力をつけると、派から離脱する政治家が少なくない」

 

亀井自身、後に石原慎太郎を伴って福田派を離脱している。

 

■どのようにして官僚の心をつかんだのか

 

角栄は官僚たちの面倒をよくみた。 たとえば、全省庁の課長以上の官僚の名前だけでなく、誕生日、出身地、入省年次、結婚記念日までも記憶して、結婚記念日や子どもが生まれるとお祝いを贈った。これはおそらく現金であったと考えられる。

 

さらに、その官僚たちが天下った政府関連の団体や企業までもすべて記憶していた。

 

後に、自身の派閥の後継者になった竹下登に、「お前も党人派なのだから、まずは官僚たちの誕生日や結婚記念日などを全部覚えろ」と言っていたそうだ。党人派とは、官僚出身でなく、政治家の秘書や地方議員出身者など、党内でキャリアを築いてきた叩き上げの政治家のことである。官僚出身の政治家なら最初から官僚とのパイプがあるのは当然だが、党人派はそうやって地道に官僚とのつながりを築くしかないということである。

 

【オンライン開催(LIVE配信)】8/17(水)19:00~開催決定
勤務医ドットコムが医師の節税・資産形成のご提案
最新「IoT投資用不動産」で利回り7%以上!

【医師限定】緊急オンラインセミナー 詳しくコチラ>>>

ジャーナリスト

1934年、滋賀県彦根市生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京での勤務を経て1977年フリーのジャーナリストに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。政治・経済・メディア・コンピュータなど、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』『大宰相 田中角栄 ロッキード裁判は無罪だった』(講談社)など多数。近著に『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)がある。

著者紹介

日本経済新聞記者

京都府出身。1991年早稲田大学大学院政治学研究科修了、日本経済新聞社入社。東京経済部で財務省、総務省などを担当。金融、エレクトロニクスの取材を経て、産業部エネルギー記者クラブ時代は石油業界の再編、アラビア石油の権益問題などを取材した。著書に『田中角栄のふろしき 首相秘書官の証言』『ビール「営業王」社長たちの戦い 4人の奇しき軌跡』(日本経済新聞出版社)、『負債650億円から蘇った男 アジア不動産で大逆転「クリードの奇跡」』(プレジデント社)。近著に『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)がある。

著者紹介

連載令和の時代に田中角栄首相だったら?新「田中角栄論」

本連載は田原総一朗氏、前野雅弥氏の著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

田中角栄がいま、首相だったら

田中角栄がいま、首相だったら

田原 総一朗 前野 雅弥

プレジデント社

2022年は、田中角栄内閣が発足してからちょうど50年にあたる。田中角栄といえば、「ロッキード事件」「闇将軍」といった金権政治家のイメージが強いが、その一方、議員立法で33もの法案を成立させたり、「日本列島改造論」に代…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧
TOPへ