香港CPIを発表、香港ドルの弱さが目立つ
香港国税調査統計局は21日、最新の消費者物価指数(CPI)を発表し、5月は前年比1.2%の上昇、市場予想(1.9%)を下回った。世界的に高インフレの中、香港のインフレは低い水準のままだった。
主な要因は、香港の消費者物価指数の算出方法が異なるためである。主に食品・エネルギーの価格に基づいている欧米とは異なり、香港は住宅支出の割合が最も大きく、全体の40%を占めている。また大部分が住宅賃料によるもので、ここ19ヶ月連続で前年比から減少していることも伸び悩む要因となっている。
内訳は衣料品・履物が前年比5.6%の上昇、次いで食料品が同4%上昇、住宅賃料については同0.8%減少した。香港は4月から新型コロナの規制緩和が徐々に進み、域内全体のインフレは食料品を含め回復傾向である。
一方、欧米のインフレ上昇率は顕著であり、米国では5月の消費者物価指数が過去最高の同8.6%上昇を記録していた。これを受けて、米連邦準備理事会(FRB)は同月15日、FOMCを開催し政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75%の引き上げ。
香港ドルは米ドルとペッグ(連動)制を採用するため、米国の利上げに追随し、香港金融管理局(HKMA)は政策金利を1.25%から2.00%に引き上げており、米国と同じく今年3回目となっていた。
ペッグ制をとる香港にとっては、追加の利上げに追随することは致し方ないことだが、金利差は、為替市場では香港ドルの売り優勢が続く原因となっている。ここ数日の香港ドル/ドルレートは上限の7.85に達しており、HKMAは繰り返し為替介入の香港ドル買いを実施している。
HKMAが5月12日以降実施した介入金額は、記録的なペースで、22日時点では計13回の介入で、金額は計957香港ドルに及ぶ。カレンシーボードの決済性預金口座残高は2417.8億香港ドルにまで減少している。
HKMAが為替市場に介入することによって香港ドル銀行間取引金利(HIBOR)は全面的に上昇している。1か月のHIBORは12日間連続で上昇し、直近では昨日より0.05809%高い0.70625%で、2020年6月以来の最高値を更新している。今後も米国の利上げに追随する香港ドルは売り優勢の流れが続くとみられる。
また下落しているのは香港ドルに限らず、アジア全体に広がっている。22日の外国為替市場は、フィリピン・ペソが一時約16年ぶりの安値を付け、韓国ウォンは2009年7月以来の安値まで落ち込んだ。
尤も香港ドルとは違って需給によるものだが、フィリピンの経常赤字拡大や韓国株式市場からの資金流出といった要因も、通貨安を促している。引き続き米国の急ピッチの金融引き締めが為替市場に影響を及ぼすと考えられる。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>