新しい環境は成長のチャンスだと考える
▶新しい環境が、眠っていたチャレンジ精神を目覚めさせた
転職したことで住む場所も仕事もまったく変わってしまい、初めは不安のほうが大きかったAさんですが、しばらくすると開き直って新しい環境の新鮮さを楽しむようになっていったといいます。しかし、仕事の面では力不足も感じたと正直なところを打ち明けてくれました。
「システムやプログラムといっても、以前の仕事とは必要な知識が違うこともあり、まだまだ期待に応えられていないと感じます。会社の人たちは、みんなとてもよくしてくれるので、実力不足以外の不自由はあまりないのですが。とはいえ、入社してからの9カ月で前進した部分もあります。古いままになっていたソフトウェアの更新など、大きな仕事もいくつかやらせてもらい、試行錯誤しながら少しずつ成果を出せていると思います」
生活環境の変化については、メリットが大きいようです。長野に来てから子どもが手足口病になったことがありましたが、妻の実家が近いおかげで、義母を頼ることができ、非常に助かったことや、妻もかなり育児が楽になって余裕ができたように見えると話してくれました。また、子どもが起きている時間に帰れるようになったのが本当にうれしいと感じています。
「以前は、起きている子どもに会えるのは週末だけということもあり、次に会うときはまた『知らないおじさん』から始めなければなりませんでした(笑)」
また、長野に来てからはプログラム以外の新しい勉強にも挑戦してみようと思い立ち、簿記の勉強をして3級検定に合格しました。今後は上位の級にもチャレンジしたいと考えています。さらに、マラソンをやっている同僚に刺激を受けて、10年ぶりくらいに走ろうかなという気持ちになっており、「まずはハーフマラソンから、大会に出たいですね」と楽し気に話します。
プライベートを充実させつつ、仕事面の課題にも前向きな姿勢で取り組んでいます。
「職種が変わり、一部のスキルは活かせるところもありますが、知識・経験がまったく足りていないと感じます。業界的にも未知のところに飛び込んだので、用語がわからず会話についていけないことも多々あります。また、以前から感じていたコミュニケーション能力の不足が表面化しています(笑)。ずっとデスクに張り付いて作業をする仕事でしたが、今は社外の方との打ち合わせもあります。ただ、これも新しい環境になったことで得られた成長のチャンスだと前向きに考えていきたいと思っています」
今の会社に転職してよかったかとの質問には、イエスの答えです。以前はプログラムメインの仕事だったのが、今は社内のインフラ整備やECサイトの管理に携わり、工場で製本の手伝いをしたり、商談のために出張したり、同人誌販売イベントに参加することもあります。これまでになかったような経験をする機会が多くあることで、チャレンジ精神をもって取り組むことができるようになりました。
新しい知識を増やしていくのは大変なことですが、楽しくやりがいもあります。前向きになれたことは、Aさんにとって仕事でも私生活でもプラスになっています。
「転職して環境が変わってみると、以前の自分はけっこう凝り固まって、保守的だったんだなと思います。今は開き直っていろいろチャレンジできているように思います。今回の転職活動では、地方への転職を希望するなら、その地域に密着している転職支援サービスを見つけるのが大事だと痛感しました。地方転職は、数多くの求職者のなかから企業が求める人をマッチングする首都圏での転職活動とはまったく違います」
江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント