保険料の安さで人気の「ネット保険」の落とし穴
今、100キロ先まで自動車で旅をしたいというとき、リッター10キロしか走らない車にガソリンが7リッターしか入っていなかったら、その車は目的地に到着できるだろうか。こんな計算は、小学生でも簡単に答を出せる。その車は目的地に到着できない、と。
パソコン上で見積もりができて、加入手続きもできる「ネット保険」が、今もてはやされているようだ。
「ネット保険」を選ぶ人の意見を聞くと、「うるさいセールスレディに付きまとわれないから」「見積もりが簡単にできるから」「加入もネット上で簡単にできるから」など、良いことずくめのように見える。
確かに生保会社の、それも特に○○系生保の設計書はわかりにくい。「よくぞここまで複雑に、わかりにくく作れるものだ」と、数多くの設計書を見慣れている筆者でさえ、○○系生保の設計書は見たくない。見れば吐き気を催すからだ。
やたらと「特約」がベタベタと付けられ、その特約も訳のわからない横文字の名前が付けられていて、理解するのに一苦労だ。そして、それを説明する営業員は、良い点はずらずらと並べるが、欠点は絶対に説明しない。
それに比べると「ネット保険」は、余計な「特約」は最初からなく、保障内容が簡単に把握できるようになっている。また、営業に係わる費用を省いているので、保険料も割安だ(実際は営業員がいないから安い訳ではなく、「掛け捨て保険」だから……)。
安い保険料で簡単に加入ができるのは魅力であり、「ネット保険」は現代の寵児に思える。でも、本当にそうだろうか。
最近の世の中は、なんでも「安いことは良いことだ」という風潮がまん延している。生命保険の世界もその風潮からは逃れられず、「保険料の高い安い」が雑誌などの記事で比較掲載される。
右肩上がりで経済が上向いている時代には賃金も上昇して、おまけにフル操業で残業代も大分稼げた。そんな時代には、「どの保険が安いか?」などといった記事は掲載されたことがなかった。「どんな保険が売れているか?」という記事ばかりだった。
時代が変わって、リーマンショックやギリシャショックで経済が停滞すると、家計の中に占める項目で真っ先に節約のやり玉に挙げられるのが、どうやら生命保険の保険料らしい。保険は(目先に死亡がないから)役に立っていないし、今すぐそこに危機が横たわっている訳ではないからだ。
そこで保険料の安い「ネット保険」などが持てはやされるのだが、「ネット保険」にも大きな欠点があることを承知して加入したのだろうか、と問いたい。
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