自動車や電化製品などでよく耳にする「下取り」。古い製品を買い取ってもらい、新品を安く手に入れるしくみです。保険にも「転換」という下取りシステムがあり、保険会社の営業はしきりに「新しい保険にしましょう」と、転換を勧めてきます。しかし、保険のプロである国際保険総合研究所所長の三田村京氏は「転換をして内容がよくなった保険は1件もみたことがない」といいます。本記事では、生命保険各社の主な「ダメ保険」と「転換」が大きな問題を孕む理由について、三田村氏が警告します。

自動車とは大違い…生保業界の「下取り」システム

日本の車は世界的にも相変わらず高品質だという評判だが、コンスタントに新しい車に乗り換えられれば、それに越したことはない。古くなった自動車は「下取り」という制度を使って現自動車の価格を査定し、新車との価格の差額を支払うことで、ピカピカの新車に楽しく乗ることができる。

 

車は新車の時点から使用している年数が経過するごとに、価値が下がっていくことは仕方がない。減価償却ということで資産価値も落ちるし、任意保険の保険料も年々下がっていく。

 

「下取り」というと、これは生命保険の世界でも盛んに使われる言葉だ。生命保険での「下取り」とは、業界での正式な言い方は「転換」という。最近では「転換」というと悪い内容だという意識が浸透してきたためか、「下取り」「新しい保険に」または英語で「コンバージョン」と言ったりしている。

 

では、生保業界での「下取り」とか「転換」とかいう制度は、一体どういうものなのか、簡単に解説しておこう。

 

自動車の場合は、いま使っている車を販売店に渡して、その車の価格と新車の価格の差額を(ローンなどで)支払って、乗り換えることを「下取り」と言う。使っていた車は年式(新車から何年経過したか)や程度(実際の価値)などによって査定価格が決定され、手に入れたい新車との差額を払えば、新車の匂いのする車のハンドルを握ることができる。

 

生命保険の「下取り(=転換)」も、これと似ているのだろうか。考えてみよう。

 

まず生命保険が自動車と1番違うところは、自動車は経年とともに(たとえ使用しなくても)価値が低下していくが、生命保険は死亡保障1,000万円で契約した保険であれば、加入から年数が経ったからといって、契約した死亡保障の保険金1,000万円という額面価値が800万円や600万円に低下することはない。

 

ここが、自動車のような「かたち」があって時間の経過とともに価値が下がっていくものとの、最大の相違点だ。

 

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※本記事は三田村京氏の著書『良い保険ダメ保険の見分け方』より一部を抜粋・再編集したものです。
※記事化にあたり、保険会社および保険商品名を伏せています(書籍には具体名の記載あり)。

良い保険ダメ保険の見分け方[第5版]

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三田村 京

自由国民社

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