年金制覇は「破綻しない」を前提に
多くの人の「老後生活の大前提」は、「公的年金」でしょう。
そこで気がかりなのは、公的年金が「破綻しないか」ということ。公的年金が破綻すると、すべての老後計画が、根本から崩れてしまうからです。
なぜ「破綻」という話が出てくるのかといえば、年金財政が悪化しているから。
日本では、公的年金に10年以上加入している人は、必ず年金をもらえると政府が約束しています。こうして、すでに加入者のみなさんに支払いを約束しているお金(年金受給権が発生しているもの)は、現在1000兆円を超えています。
年金では、そのための積み立てもしていますが、その将来の支払いのために積み立てているお金は、なんと約200兆円しかないのです。
約1000兆円から約200兆円を引くと、約800兆円。こんなに支払うお金が不足していては、誰もがこのままでは「公的年金は、破綻する」と思うのは当然でしょう。
ただ、結論から言えば、日本の国が「財政破綻」しない限り、公的年金も破綻しません。その理由を、お話ししましょう。
■年金が破綻しないと言えるワケ
今の日本の年金は、「年金を払います」という約束をしている額は、既に積み立てをしている額に比べて極端に少ない状況にあります。これは、過去の大盤振る舞いやずさんな管理、予想ミスなどで、超高齢化社会に対応できるだけの充分な積み立てをしてこなかったためです。
ただ、なぜこんな状況でも公的年金が破綻しないのかといえば、10年加入して受給権(年金をもらう権利)が発生したからといって、公的年金は、今すぐにみんなに支払わなくてはならないものではないからです。
公的年金がもらえるのは、65歳から(早くもらいたい人は、目減りしますが60歳からでももらえます)。
10年加入して年金の受給権があったとしても、65歳までもらうのを待たなくてはいけないので、国はそのぶんをツケとして先送りできるということです。
■国には、年金を破綻させない裏ワザがある
年金が破綻しないもっとも大きな要因は、政府が年金の破綻に耐えられないことにあります。
仮に、公的年金が破綻したら、すでに政府が「年金をお支払いします」と約束している人たちは、政府を相手に「約束を守れ」という訴訟を起こし、そこで政府はお金を支払わなくてはならなくなります。全員を対象にお金を支払うとなったら、前述のように約800兆円をまとめて支払わなくてはならなくなるので、それだけで日本は財政破綻してしまいます。
そうならないために、国はいくつもの手を打つことができます。
たとえば、日本の年金の基礎年金部分の半分は、政府が税金からお金を出しています。基礎年金は満額で月約6万円ほどですが、その半分の約3万円は、みなさんが支払った年金保険料ではなく税金なのです。ですから、破綻しそうになったら、この税金の額を3万円でなく全額の6万円にしてしまえば、破綻しません。
また、「保険料を上げる」「支給開始年齢を上げる」「支払う年金をカット」するなど、さまざまな方法があるので、年金は破綻しないのです。
問題は、年金財政の健全化のために、すでに「保険料を上げる」「支給開始年齢を上げる」「支払う年金をカット」という方法が取られていることです。
みなさんが支払っている年金保険料は、2004年の年金改革で引き上げが決まり、今も毎年少しずつ上がっています。また、支給開始年齢も、55歳→60歳→65歳と引き上げられていて、すでに70歳支給開始も視野に入っています。