農地、接道のない袋地…地方の実家所有の不動産を売却したい【弁護士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

九州から東京の大学に進学、そのまま就職・結婚して東京に生活拠点を移した男性。実家の両親が亡くなり相続が発生しましたが、戻る予定はありません。そのため不動産を売却したいのですが、農地や接道のない土地など、売りにくいものばかり。それなりの預貯金があるため、相続放棄はしたくないのですが…。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

両親が他界、実家の農地を手放したいが…

本日ご相談に来られたのは、40代のAさんです。Aさんの父親は10年前に亡くなり、そのときは母親がすべて相続したそうです。先月、母親が亡くなったため、一人息子であるAさんが唯一の相続人として、相続手続をおこなう必要がありました。

 

「両親は福岡の地で代々農業をしてきました。私は大学入学を機に上京し、現在も東京で会社員として勤務しています。都内にマンションを購入して、妻と子どもと一緒に暮らしており、今後も福岡に戻る予定はありません。母の遺産は預貯金のほかに、実家の土地建物と、田畑がありまして…。福岡の不動産は不要なため、売却できるものならそうしたいのですが、どうすればいいのでしょうか」

預貯金があるため、相続放棄はしたくない

Aさんのように、預貯金等の遺産があるため相続放棄はしたくないが、不要な不動産の扱いに困っている、という相談は少なくありません。

 

なかには、不要な不動産を放置するケースもありますが、固定資産税の負担は発生しますし、自身に相続が発生した場合、結局は子どもなどの次世代へ同じ悩みを引き渡すことになるため、お勧めできません。

 

不要な不動産は売却してしまいたいところですが、田畑は売却しにくい不動産の代表です。今回はまず、この点に着目してみます。

農地を手放すための「2つの方法」

不動産を取得した場合、法務局での相続登記が必要となります。農地を相続した場合には、相続登記に加え、被相続人の死亡から10ヵ月以内に「農業委員会への相続届出」をすることが義務付けられています。

 

農業委員会に相談すると、農地の借り手を探す手伝いをしてくれることもありますが、誰かに貸すのではなく、売却してしまいたいという場合はどうしたらいいでしょうか。

 

1つは、農地を農地のまま売却するという方法があります。しかし、売却には農業委員会、あるいは都道府県知事の許可が必要となり、農業従事者(そのなかでも更に条件があります)でなければ許可が得られません。許可が得られない場合には、残念ながら、農地を売却することはかないません。

 

2つ目は、農地を農地以外にして売却する方法です。農地を宅地などに用途変更することを、農地の「転用」といいます。農地が宅地に転用できれば、通常の不動産と同様に売却手続を進めることができますが、転用にも農業委員会の許可が必要となり、以下の通り、農地の区分によって許可取得のハードルは異なります。

 

[図表1]農地転用の許可基準

 

もちろんこれは原則ですので、「不許可」となっていても許可される場合もありますが、現実的にはかなり困難でしょう。また、転用許可が得られやすい区分でも、農地を宅地に転用するには、宅地造成費用等もかかります。費用をかけて転用しても、高い金額で売れない可能性もありますので、売却の見込みがあるか、慎重に検討する必要があります。

 

Aさんの場合、相続した農地は「農用地区域内農地」でしたので、転用許可を得られる見込みは殆どありませんでした。しかし、幸い、Aさんの遠い親戚が農業を営んでおり、農業委員会の許可も得られたため、無事農地を親戚に売却することができました。

実家の不動産は、接道がなく再建築が不可能に!

農地の件は解決しましたが、Aさんは実家の不動産についても気がかりなようです。

 

Aさん「実家は祖父の代からあるかなり古い家ですので、建物に資産価値がないことはわかっていました。土地は売れるだろうと思って不動産会社に査定をしてもらったのですが、不動産会社からは、道路に接していないため、再建築が不可能で、こんな土地では売れないといわれてしまいました。何とか売る方法はないのでしょうか…」

 

Aさんの話によれば、実家の土地は、以下のようになっているそうです。

 

[図表2]Aさんの実家の土地

 

今回のように、他人の土地などに囲まれ、道路と接していない土地のことを「袋地」といいます。建築基準法上、道路に接していない土地に建物を建築することはできません。そのため、Aさんの実家は、古い建物を取り壊したあとに、新しく建物を建築できない状態になっていました。

 

こうなると、買い手がつかないか、売却に成功したとしてもかなり低額となってしまいます。

道路と接する隣地を購入し、価値を高めて売却

しかし、このような場合には「道路と接する土地を購入して、袋地と合わせて売却する」という方法があります。

 

Aさんも、相続した預貯金と農地の売却代金を元手に、道路と接する隣地を購入することにしました。Aさんの実家の隣地は、長らく空き家となっていました。そこで、筆者は、隣地の登記情報を取得し、現在の登記名義人に手紙を出して、Aさんの事情の説明と、売却のお願いをすることになりました。

 

手紙を出したところ、隣地の登記名義人Bさんと無事連絡が取れました。Bさんの話によれば、Bさんも福岡を離れ、親から相続した土地を持て余していたそうです。古い建物を取り壊すのにも費用がかかるため、しばらく放置していたとのことでした。Bさんと交渉の結果、Aさんは、隣地を1,000万円で購入することになりました。

 

Bさんの土地と合わせることで、実家の土地は無事接道義務を満たしました。また、土地が広くなったため、建物だけでなく、車庫を作る余裕もできました。そのため資産価値が上がり、Aさんは、土地を3,000万円で売却することに成功しました。

 

このように、売却しにくい不動産を相続した場合、通常の不動産を売却するよりも時間や手間がかかりますが、何らかの方法で売却することも可能です。せっかく相続した遺産ですから、持て余してしてしまうことなく、有効活用する手立てを考えてみましょう。

 

 

國丸 知宏
弁護士法人菰田総合法律事務所
弁護士

 

 

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    弁護士法人菰田総合法律事務所 弁護士

    福岡県宗像市出身。九州大学法科大学院修了後、2017年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。

    入所当初から家事事件を中心に経験を積み、現在は相続分野に注力する。また、2020年1月に博多マルイ内にオープンした相続相談専門店「相続LOUNGE」の相談・実務対応にも携わる。

    幼いころに弁護士と関わる機会があり、それをきっかけに弁護士を目指したことから、第一に依頼者目線を大切にしており、「話をしっかりと受け止めてくれる」「説明が丁寧」との声が多い。

    依頼者の利益を最大限に実現することが自身の弁護士としての責任だと考え、法的な面だけでなく、その裏側にある依頼者の想いを大事に、二人三脚での問題解決に努めている。


    弁護士法人菰田総合法律事務所
    福岡市博多区博多駅前2-20-1 大博多ビル8階
    https://komoda-law.jp/

    相続LOUNGE
    博多マルイ5階
    https://souzoku-lounge.jp/


    著者紹介

    連載「相続に強い法律事務所」発!気鋭の弁護士が解説する、相続対策&トラブル解決策

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