(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

アント・グループのIPO計画復活か

10日、アリババ(9988)は香港時間で株価を戻し1.3%反発した。アリババはアントの発行済み株式の約3分の1を保有しているため、同社の株価は、噂に振り回される一日となった。

 

前日、中国の金融規制当局がフィンテック企業アント・グループのIPOの承認を検討していると報じられた。この報道を受け昨日の米国時間の取引で、同社株はプレマーケットで6%上昇し125ドルの高値を一時超えたが、中国証券管理委員会がすぐに否定し、株価は一転して8%の大幅反落した。

 

しかし、本日、ロイターが、匿名筋の話として、中国政府指導部が来月の予定でアント社の上場申請を暫定的に承認したことを伝えた。これを受けて、香港時間の取引で、同社株は一転してプラス圏まで戻すなど情報が錯綜する流れが続いた。アント社は20年11月に350億ドルを調達するために香港上場を予定していたが、上場前夜に突然中止を発表していた。

 

一方、米国規制当局が調査を終了した米国上場の滴滴(DiDi)は本日6月10日にニューヨーク証券取引所から上場廃止になると発表がなされた。同社株は昨年6月30日、上場当初こそ18.01米ドルの最高値をつけ、時価総額で874億米ドル(約6,820億香港ドル)まで拡大したもの、その後の中国当局の規制強化により、株価は90%下落していた。

 

滴滴出行は5月23日に北京で臨時株主総会を開催し、上場廃止計画を圧倒的多数の株主の賛成により承認していた。米国における中国系企業の上場は、滴滴出行の上場以降、概ね止まっている。SPACなどを考慮しても米国上場を果たした中国系企業はごくわずかに過ぎない。

 

米国に上場している中国企業は、監査基準の不遵守などの問題をクリアしない限り、2024年までに上場廃止になる可能性がある。米中対立の構図は引き続き厳しいものがあるもの、11か月におよぶ滴滴出行の混乱は終わった。

中国CPIを発表

中国国家統計局が10日発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前月の伸び率と変わらず前年比2.1%上昇(前月比▲0.2%)、市場予想の2.2%を下回った。生産者物価指数(PPI)については前年比6.4%上昇(前月比+0.2%)と21年3月以来の低い伸びとなり、前月の8.0%から減少した。

 

新型コロナの厳しい規制により生産と消費の双方に影響がみられ、中国経済の鈍化を示すデータとなった。コモディティー価格の上昇で、CPIの伸び率は安定的に推移しているもの、内需は弱く工業製品や電化製品などの生産の販売も落ち込んだことが要因としてあげられる。
 

消費者物価指数(CPI)

 

生産者物価指数(PPI)

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

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