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近年、家庭裁判所での遺産分割事件数は増加傾向にあり、公正証書遺言(遺言公正書)の作成件数も増えています。「うちは遺言書なんて必要ない」と決めつけてしまうと、残された家族が大変な思いをすることになる可能性があります。遺言書が必要な人とは? みていきましょう。

遺言書が必要な人②…法定相続人以外に遺産を残す人

遺言書が必要な人その②は、「法定相続人以外の人に遺産を残したい(遺贈したい)人」です。ここでは「法定相続人がいる」、という前提で解説をしていきます。

 

法定相続人以外の人とは、例を挙げていうと以下のような人です。

 

【法定相続人以外の人とは】

  • 内縁関係の妻や夫
  • 養子縁組していない配偶者の子供
  • 配偶者の親族
  • 代襲相続をしない上での孫・祖父母・甥姪
  • 良くしてくれる婿や嫁や従妹
  • 血縁関係のない友人知人

 

法定相続人は、あなたの配偶者・子供(嫡出子ではない子・養子含む)・父母・兄弟姉妹といった家族や親族となります。仮に法定相続人が他界している場合、子であれば孫・父母であれば祖父母・兄弟姉妹であれば甥姪が代襲相続をします。

 

法定相続人以外の人に遺贈したくても、遺言書がないと遺産の分配はありません。お世話になっている人に確実に遺産を残したい人は、遺言書の作成が必要です。

遺言書が必要な人③…相続したくない人や財産がある人

遺言書が必要な人その③は、「相続させたくない人や財産がある人」です。「人」と「財産」では内容が異なるので、2項に分けて解説します。

 

相続をさせたくない法定相続人がいる

相続をさせたくない法定相続人がいる人は、遺言書が必要な人と言えるでしょう。たとえば、長年親不孝ばかりしていた子供、ほとんど会ったことがない前妻の子供、虐待を繰り返した両親などです。

 

ただし、相続をさせたくないのが第一順位の子供や第二順位の両親である場合、「遺留分」という権利があるため遺言書に記載するだけでは難しく、「生前排除」もしくは「遺言排除」を行う必要があります。

 

相続をさせたくないのが兄弟姉妹であれば、これらを行う必要はありません。

 

相続をさせたくないマイナスの財産がある

相続の対象となるのは現金や不動産などの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も対象となります。

 

仮に法定相続人がマイナスの財産の存在を知らない場合、遺言書を残しておかないとマイナスの財産まで相続してしまう可能性があります。マイナスの財産がある場合は、遺言書を遺してその旨を記載しておきましょう。

 

というのも、借金などのマイナスの財産は相続後3ヵ月以内に手続きをすれば、「限定承認」や「相続放棄」という選択肢が残されるためです。

 

遺言書や財産目録を残しておけば、法定相続人に遺産を相続するか放棄するかを考える時間の猶予を与えることができます。

遺言書が必要な人④…法定相続人がいない

遺言書が必要な人その④は、「法定相続人がいない人」です。法定相続人が「いない」というのは、「法定相続人が行方不明でいない」場合と「家族や親戚がそもそもいない」という2種類のケースに分けられます。ここでは2つの「いない」パターンに分けて、解説をします。

 

法定相続人が行方不明

法定相相続人が行方不明で連絡が取れない、会ったことがない法定相続人がいる場合、遺言書の作成が必要です。これは相続させたい・させたくないの問題ではなく、遺産分割協議ができなくなるためです。遺産分割協議は法定相続人全員が揃わないとできず、全員の合意がないと遺産分割できません。

 

法定相続人の1人が行方不明の場合、家庭裁判所に「失踪宣告」を申告、もしくは不在者財産管理人を選任する必要があります。遺言書を作成しておけば遺産分割協議が不要となるため、これらの手続きをする必要はありません。

 

家族も親戚もいない

法定相続人がいない場合、民法959条によって「遺産は国庫に帰属される」と定められています。生計を共にしている内縁者や家族同然の友人知人がいる場合、遺言書を作成しておけば遺贈できます。
 

仮に遺言書がなくても法定相続人以外の人自らが「特別縁故者」の申し出をし、家庭裁判所から認められれば遺産分与は受けられます。

 

ただ、特別縁故者は誰でもなれる訳ではなく、認められるまで期間もかかり、家庭裁判所から必ず認められる保証もありません。家族や親戚はいないけど遺産を渡したい人がいる場合、遺言書の作成が必要と言えるでしょう。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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