※画像はイメージです/PIXTA

遺言書によって財産を渡す方法には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。どちらにするかは、遺言書を書く人が自由に決めることができます。一見そんなに違いがないように見えますが、どちらの方法を採用するかによって、財産を受け取る側の相続税の金額が変わったり、また負うべきリスクが変わったするので注意が必要です。

「包括遺贈」の定義と特徴

包括遺贈とは、全財産を割合を指定することで渡す方法です。たとえば、「私の全財産の3分の1をAさんに渡す」といった指定の方法です。なお、「私の財産のうち、土地Aの2分の1をAさんに渡す」といった指定の方法は包括遺贈ではなく、後に説明する「特定遺贈」に該当します。

 

民法に以下のような条文があります。

 

(包括受遺者の権利義務)

民法990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

(引用:民法 九百九十条(包括受遺者の権利義務))

 

上記の民法の条文の通り、包括受遺者(包括遺贈で財産を受け取った者)は、相続人と同一の権利及び義務を有することになります。

 

実際問題として、財産を割合で指定されたとしても、いざ具体的に配分をしようとすれば、どの財産を取得するかという部分が決まっていませんので、他の受遺者や相続人と相談する必要がでてきます。ですので、包括遺贈により財産を取得する人は、他の相続人と一緒に遺産分割協議を行うこととなります。

「特定遺贈」の定義と特徴

特定遺贈とは、財産を特定して渡す方法のことを言います。たとえば、「私の財産のうち甲土地をAさんに渡す」といった指定の方法です。

 

受け取る財産が明確になっているため、包括遺贈と異なり、他の相続人や受遺者と遺産分割協議を行う必要がありません。

包括遺贈と特定遺贈の主なメリット・デメリット

一方のメリットが一方のデメリットという関係にありますが、以下詳しく解説していきます。

 

・財産内容の変更に対応ができるかどうか

包括遺贈のように「全財産の何分の何」と言うように割合で指定を行っている場合、遺言書を書いた時点と実際相続が発生した時点で遺産内容に変更があったとしても特に問題が生じることはありません。

 

ただ、特定遺贈の場合は、遺言書を記載した時点と相続が発生した時点で財産の状況が異なった場合に問題が生じてしまう可能性があります。たとえば、遺言書を書いた時点では土地A5,000万(市場価格)を相続人Aに、土地B5,000万円(市場価格)を相続人Bにというように、公平に財産を分けるつもりであっても、いざ相続が発生したときは、土地Aが値上がりしていて6,000万円に、土地Bが値下がりしていて4,000万円になっていたという事態も起こりかねません。

 

・債務(借金)を引き継ぐかどうか

「包括遺贈」は債務(借金)を引き継ぎ、「特定遺贈」は債務(借金)は引き継ぎません。ですので、「特定遺贈」で財産をもらう者にとっては、安心して財産を譲り受けることができます。但し、「包括遺贈」の場合には、同時に借金も引き継いでしまう恐れもあるため、財産を譲り受ける際には隠れた借金がないかどうかという点に気を付ける必要がでてきます。

 

・相続放棄に期限があるかどうか

「包括遺贈」の場合は、他の相続人と同様、放棄をする場合には相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。これは、上述の債務(借金)を引き継ぐ可能性があることと関係しています。

 

なお、「特定遺贈」の場合は放棄に特に期限はありません。

包括遺贈を選択した方が良い場合

 

実際の遺言書で、特に意識をせずに書くとほとんどの場合が特定遺贈になると思います。多くの場合、遺言書を書く理由は、「遺産の分け方で揉めて、相続人が争って欲しくないから」だと思います。ここで、包括遺贈ですと割合しか決められていないので、結局はどの財産を誰が取得するという部分を決めるために遺産分割協議をする必要があるからです。

ただ、次のような場合は、包括遺贈を選択した方がよいでしょう。

 

・自分の具体的な財産を正確に把握していない場合

・財産の内容が頻繁に変動し相続時点の財産内容の想定が難しい場合

・あえて割合のみを指定し、具体的な分割は財産をもらう側で相談して決めてほしい場合

 

こういった場合は、特定遺贈で具体的に財産を指定することができませんので、包括遺贈という方法で、ざっくりと割合のみを決めておく遺言書を作ると良いでしょう。

特定遺贈を選択した方が良い場合

特定遺贈で遺言書を作った方が良い場合は、「包括遺贈を選択した方が良い場合」以外となりますが、具体的には以下のような場合が該当します。

 

・財産を渡す者に借金を負わせたくない場合

・誰にどの財産を渡すということを具体的に指定したい場合

・相続発生後に財産をもらう人間同士で遺産分割の話をする必要がない状態にしたい場合

 

包括遺贈をいう方法では、このようなことを実現することができないため、特定遺贈という方法を使う必要があるためです。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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