認知症で「家族の手に負えなくなった」78歳男性…症状が改善したワケ【専門医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症ケアには、「その人の立場に立った対応」が症状の軽減に有効という考え方があります。認知症中期から始まる徘徊や妄想、暴力や暴言といった「BPSD(周辺症状)」は、介護者にとって大きな負担となりやすく、ケアも消極的になりがちです。しかし、中期は特に「患者とどう関わるか」によって症状が悪化したり改善したりしやすい時期でもあります。適切なケアを行うにはどうすれば良いのでしょうか? 今回は、認知症の人のためのケアマネジメントとして広まりつつある「センター方式」について見ていきましょう。

その人らしさを尊重する「センター方式」という指標

認知症の人のためのケアマネジメントとして、国内では認知症介護研究・研修センターから出されている「センター方式」が広まりつつあります。

 

センター方式は、「認知症があっても最期まで、その人の尊厳と利用者本位の暮らしの継続を支援するための新しい認知症ケアを、ケア関係者が共働して実践していくことを推進するための、統一的なケアマネジメント方法」を、狙いとしています。やや難解な言い回しですが、簡単に言えば、認知症があってもその人らしさを尊重したケアを行い、生活が送れるようにしましょう。そのために、ケアに携わる人が協力し実践し続けられるような統一されたケアマネジメント法を「センター方式」としてつくりましたということです。

 

センター方式には、次の5つの視点が盛り込まれています。

 

①その人らしいあり方

②その人の安心、快

③暮らしのなかでの心身の力の発揮

④その人にとっての安全・健やかさ

⑤なじみの暮らしの継続(環境・関係・生活)

 

5つの視点をもう少し具体的な行動目標に落とし込むと、それぞれ次のようになります。

 

①その人らしいあり方

●本人の声、気持ち、希望や自己決定を重視する

●本人の人生史(これまでの物語)や生活習慣、趣味や好み、暮らし方、個性を知り、それらが継続できるよう支援する

●本人が長い人生で培ってきた人間性や人生観、誇りを最大限尊重する

 

②その人の安心、快

●暮らしのなかの困っていることや生活障害を軽減させる

●想像を超える不安と不快、苦痛やストレスを取り除く

●環境を整え、体調を整え、安らぎや心地よさをつくる

●周囲の介護者自身が本人を脅かす存在にならないこと

 

③暮らしのなかでの心身の力の発揮

●本人なりのなじみの暮らし方を重視し、心身の力の発揮や役割をもてる場面を増やす

●できること、分かることに注目し、自信や誇りを回復

 

④その人にとっての安全・健やかさ

●暮らしのなかのリスクを見極め安全を確保する

●日々の体調変化のサインを見逃さず、早期発見と健康維持に努める

 

⑤なじみの暮らしの継続(環境・関係・生活)

●これまでの暮らしと暮らし方の維持

●家族との関係性、地域とのなじみの関係性を保持

●可能な限り住み慣れた家や地域で暮らせるよう、継続的・包括的支援を行う

 

センター方式では、この5つの視点に則って、ケアのさまざまな場面で活用可能な各種シートがつくられています(図表1)。

 

出典:認知症介護研究・研修センター
[図表1]5つの視点に則ったセンター方式シート 出典:認知症介護研究・研修センター

 

大きく「基本情報」「暮らしの情報」「心身の情報」「焦点情報」「その他」に分けられています。

 

例えば、「暮らしの情報」のカテゴリにある「私の生活史シート」は、一日の過ごし方を24時間記録できるようになっています。

 

また、「心身の情報」のカテゴリにある「私の姿と気持ちシート」は、認知症の人が言った言葉、家族の言葉、ケアスタッフが気づいたことを認知症の人を主人公「私」にして書き留めておくためのものです。「私の不安、苦痛、悲しみは…」「私がやりたいことや願い、要望は…」など、いくつかの項目があります。

 

これを医療関係者やケアスタッフに書いてもらうと、自分がケアしている認知症患者のことを、分かっているつもりで意外と分かっていないといった気づきの声もよく聞かれます。

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    旭神経内科リハビリテーション病院 院長 日本神経学会認定神経内科専門医
    日本老年精神医学会専門医
    日本認知症学会専門医
    日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医

    千葉大学医学部を卒業後、銚子市立病院精神科、松戸市立病院神経内科を経て、旭神経内科医院を設立、院長に就任。

    介護老人保護施設栗ヶ沢デイホーム施設長、千葉県東葛北部地域リハビリテーション広域支援センター長を兼任。

    2002年には、回復期リハビリテーション病棟を開設。2004年に旭神経内科リハビリテーション病院に改称。認知症、寝たきりになっても、住み慣れた地域で長く暮らせる街づくりに取り組んでいる。

    日本認知症ケア学会平成26年度奨励賞、2016年第25回若月賞受賞。

    著者紹介

    連載専門医が徹底解説!「隠れ認知症」の早期発見・早期ケア

    ※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

    増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

    旭 俊臣

    幻冬舎メディアコンサルティング

    近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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