(※写真はイメージです/PIXTA)

暗号資産に対してネガティブな印象を抱く方は少なくないかもしれません。しかし今、暗号資産は世界中で強い信頼性と価値を保つことが可能なものとして認識され始めています。今後、有力な投資商品の一つになる可能性が高まっており、学んでおいて損はないでしょう。1級FP技能士・笹田潔氏が、暗号資産の基礎知識をゼロから解説します。

暗号資産の市場規模

暗号資産はその名のとおり「暗号」なので、日本円のようなリアルな通貨(法定通貨)と違って、実際の硬貨や紙幣のような「目に見えるお金」があるわけではありません。しかも、実際に暗号資産を使って買い物や支払いをする機会も現状では限られているので、たとえばビットコインが世の中にどれくらい出回っているかも想像のつきにくいところです。

 

実際、暗号資産の市場規模がどのくらいなのかは、Coin Market Capというネット画面で、タイムリーに調べることが可能です。データで見ていくと、2022年度はリスク資産回避の動きから、全種類のコイン時価総額合計で約1.23兆ドルであることが分かります(2022年6月10日時点)。

 

暗号資産の時価総額を、世界全体の株式市場の時価総額と比較するとこうなります。

 

2022年5月末の世界の株式時価総額は、105.6兆ドルです。そのうち米国が45.2兆ドルで42.8%を占めています。日本(TOPIX)は5.6兆ドルで5.3%となり、中国の10.3兆ドル(9.8%)に次ぐ、第3位になっています(※1)

 

では、金の採掘量はどれぐらいとされているのでしょうか?

 

金が発見されてから6000年余り、世界各地でこれまで採掘してきた金の総量は、約183,600トンと言われています。なお、現在世界での採掘量は年間約3,000トンです。

 

現時点の金の国際価格の取引単位「トロイオンス(TOZ)(貴金属の重量単位)※2」1,852ドル/TOZで割り戻すと、約12.1兆ドルが金全体の総量と言えます。

 

株式市場や金総量などと比べても、暗号資産全体の時価総額は非常に小さいマーケットであることがお分かりいただけたと思います。これが暗号資産のボラティリティーを大きくしている要因の一つと言っても良いでしょう。

 

※1 岡三証券 2022年6月『外国株式投資の魅力』(https://www.okasan.co.jp/marketinfo/knowledge/pdf/attractive_foreign_stock.pdf)

 

※2 1トロイオンスは約31.1035グラム。略して「オンス」とも言います。

暗号資産、「投資対象」としてはどうなのか?

市場規模をご確認いただければ、中央機関の管理でない強い信頼性と価値を保つことが可能となった暗号資産(仮想通貨)は、これから市場での価値を、より確固たるものとする可能性を秘めていることが分かるでしょう。

 

暗号資産(仮想通貨)が投資対象として市場価値を持つためには、以下のことが必要です。

 

①実用化の進展

暗号資産(仮想通貨)は「円」や「ドル」などの法定通貨とは異なり、発行主体が存在していないのが大きな特徴です。世界共通で使用することができることから「決済通貨」として普及する可能性もあります。ただし、決済通貨となるためには価格がある程度安定し、マネーロンダリングなど不正利用の防止策が徹底される必要があると言えます。暗号資産(仮想通貨)の実用化が本格的に行われるには、まずそれらの課題を解決する必要があるでしょう。

 

②ビットコイン現物ETF(Exchange Traded Fund)の承認

ビットコイン先物ETFは、昨年、米国SEC(米国証券取引委員会)の承認を得ました。ビットコイン現物ETFの承認は今後の暗号資産(仮想通貨)の価格に大きな影響を与えるとされています。現物ETFが承認されることになれば、証券取引所内でのトレードを行うことも可能になり、大口の機関投資家などの参入が予想されます。これは大口の機関投資家が参入しやすくなり、暗号資産(仮想通貨)の価格を引き上げることに繋がります。

 

③各国の法整備の進行

暗号資産(仮想通貨)は比較的新しい投資対象ですので、世界各国での法整備が未だに整っていません。今後普及するには、以下の二つに関する法整備が必要と言われています。

 

(1)税金制度…「トレード」「マイニング」などで得た利益には、税金がかかります。国によって所得の種類や税率も異なりますが、日本では「雑所得」に分類され、他の所得と合算されて、合計所得金額に応じて課税されます(法人の場合は、期末で資産の洗替えが必要です)。

 

(2)ICO(Initial Coin Offering)の世界標準化…ICOとは新しい通貨を発行して、新しいコインのプロジェクトなどの資金調達を行うことを言います。ICOでは「暗号資産(仮想通貨)の発行」を行うことで、比較的簡単に資金調達を行うことができます。ただし、その反面、ICOが詐欺などに用いられるケースも後を絶ちません。ICOで資金調達を行い、資金を集めた後は飛んでしまうなどの詐欺が繰り返されたため、ICOに対し規制を行なっている国も多いようです。

 

④スケーラビリティ問題の改善

暗号資産(仮想通貨)が今後普及するには、スケーラビリティ問題の解決が不可欠です。スケーラビリティ問題とは、トランザクション(取引)が増加し、一つのブロック内に取引データを格納しきれなくなり、取引が完了するまでに遅延が発生してしまう問題のことを言います。しかしながら、この問題を解決するコインの発行もされています。また、ビットコインやイーサリアムもバージョンをアップすることで本課題の解決に繋げようとしています。

 

⑤大手企業による暗号資産(仮想通貨)事業への参入

日本ではまだ普及していませんが、米国などでは中小企業が暗号資産(仮想通貨)を決済通貨として採用し始めています。また、エルサルバドルをはじめとし、法定通貨としても利用する国が出てきています。ペイパル、スターバックス、サーティーワンアイスクリームのような大手企業が暗号資産(仮想通貨)に関する事業に参入すれば、利用者が増加し市場が活性化していくことは間違いありません。

 

以上のような事柄が徐々に解決していく流れの中では、暗号資産(仮想通貨)の市場におけるポジションを勘案し投資商品の一つに加えていくという選択肢が、無視できない状況になりつつあります。

 

読者の中には、現時点で暗号資産(仮想通貨)やNFTに興味持っているが、まだ保有していないという方もいるでしょう。そういった方は、保有財産のすべてを暗号資産(仮想通貨)に投資するのではなく、一部の資産をリスク資産として暗号資産(仮想通貨)に回しておくという選択肢も、資産防衛の観点から考えていただく必要があるのではないでしょうか。

 

 

笹田 潔

1級FP技能士

宅地建物取引主任士

投資診断士

 

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