円安が及ぼす影響は?
日本銀行が大規模な金融緩和を継続する方針を示したことで、ドル円相場はついに130円台に突入しました。直近では米国株式の下落により円相場は1ドル=128~129円を推移していますが、今後のドル高・円安トレンドが継続のメインシナリオとして多くのアナリストが予想しています。
では、円安が続くことで身近な生活にどのような影響が出てしまうのでしょうか?
円安になると、日本からの輸出が有利になり、海外投資からの利益も円建てでは膨らむとされ、過去輸出産業で貿易黒字を築いていた日本経済においてプラスに働くものと考えられていました。ところが、現在の日本において輸入品が割高になることは、海外に頼るエネルギーや、食料品、原材料の価格が上昇するだけでなく、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢による物流が滞ることによる国際価格の急上昇も相まって、その影響が増幅されることに繋がっていることは言うまでもなく、多くのメディアでも取り上げられていることです。
もちろん、この影響はすでに消費者物価指数(CPI)にも及んでおり、速報値では月次の前年同月比2.5%と公表されています(図表2)。
このまま消費者物価指数(CPI)が上がり続けるか否かは今回の考察では言及しませんが、米国の消費者物価指数(CPI)の上昇継続の流れからも、容易に推測できることと言えます。
「過去のインフレ」と「今回のインフレ」の違い
円安が進行すると、物価が上昇する傾向にあることは前述しましたが、物価が上昇する局面では通常インフレーション(インフレ)になります。
では、インフレはどのようにして生じるのでしょうか? 過去インフレは、以下のような流れから、生じるとされていました。
景気がよくなる→給与が上がる/収入が増える→お金よりモノを必要とする→需要が増えて消費が拡大する→供給不足が生じモノの値段が上がる→供給量を増やすべく、企業が設備や人への投資を加速する→仕事の機会が増える→景気が良くなる という循環です。
今回のインフレはモノの需給関係から生じた価格上昇ではなく、外部環境から生じている物価上昇と言えます。これは、黒田総裁が4月の記者会見で「消費者物価は4月以降、2%程度の伸びとなる可能性がある」としながらも、今後も大規模な金融緩和を続ける姿勢を繰り返し強調した「エネルギー価格の上昇による『望ましくない物価上昇』であり、金融緩和を続け、景気を下支えする必要がある」としたことに繋がります。
まさにこの状況こそが、景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象であり、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Inflation)」を組み合わせた合成語で、スタグフレーションといいます。
スタグフレーション時では物価が上昇する一方、給料が上がらないため生活が苦しくなる方も出てしまいます。そのため、早めに給料以外の方法で、安定した収入を確保する準備をしていくことが必要になるのです。
円安でも自分の資産を守るには?
スタグフレーションが起きたときにも強いと言われる運用に、投資商品の購入があります。これは人の雇用と直接関係せず収支が得られることからです。当然、投資にはリターンに合ったリスクも存在します。投資商品の購入は自己責任で行っていただくことが大原則ですので、給与以外の方法が投資と記載してあったことを理由に投資商品の購入に走ることは避けてください。
投資商品の購入でリスクを軽減する方法の一つに「分散投資」があります。分散投資とは、ひとつの資産やひとつの銘柄に集中して一度に資金を投入するのではなく、いくつもの資産やいくつもの銘柄に対し複数回に分けて投資することを指します。分散投資では相関係数(2種類のデータ間の関連性を表す係数)が低い(相関係数が1に近い:正の相関、相関係数が-1に近い:負の相関、相関係数が0に近い:相関がない とされ、正の相関とは同じ方向に動きやすいことで、負の相関とは逆方向に動きやすいことを示します)資産を組み合わせることが、より効果的です。
相関係数のことなる資産の種類として、以下の投資商品が挙げられます。
①不動産投資
②株式投資
③債権投資
④金・コモディティ
⑤暗号資産投資
⑥FX投資
まとめ:一刻も早く「安定した収入源」を用意すべし
今回は、円安で資産劣化を防ぐための防御策として、投資商品の購入という手法があるとしましたが、投資に取り組んだことがない、前掲のような商品の買い方も分からないという方が多いと思います。
為替レートは、金利や通貨供給量の差だけで決まるものではなく、資源や食糧などに基づいた富や経済力によっても大きく左右されます。これは現在円がルーブルよりも極端に価値が低いと評価されていることから明らかです。ルーブルには、貨幣価値を担保する資源、食糧(ロシアは、原油産出量世界第3位、小麦生産量世界第3位 トウモロコシ生産量世界第10位、金産出量世界第3位)などがあります。日本にはそれらがほとんどないのです。
円安は円が売られるから起こるのですが、今の円安は、円売りではなく「日本売り」といっても過言はないと思います。経済成長が鈍化している国の通貨を、グローバルな視点でみれば投資家はもちろん、国も持ちたがらないのです。
今回の円安は過去と異なり一過性のものとは言えない可能性があります。そのうえで保有している資産の劣化を防ぐ手法を書かせていただきました。
本稿をお読みいただいた方には、一刻も早く行動に移すことをおすすめして、まとめとさせていただきます。
笹田 潔
1級FP技能士
宅地建物取引主任士
投資診断士
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