米国の覇権はエネルギーによって延命される
足元では、米国から欧州へのエネルギー資源輸出が急増しています。今後とも、欧州は、米国のエネルギー資源、特に、LNGへの依存を拡大させるでしょう。それは、日本も同様でしょう。
電力の供給は容易な事業ではなく、火力や原子力は、安定した電源として、今後とも必要とされるでしょう。
また、平和は終わって安全保障が長期的な課題になるなか、地球温暖化の議論についても、エネルギー(と原子力、火力発電の)大国である米国が、欧州に代わって仕切り役となっていく可能性もあるでしょう。
米国の高いインフレ率や『双子の赤字』拡大は「ドル安」の材料であり、長年そのように主張されてきました。
しかし、①ウクライナ危機を「きっかけ」とするロシアから西側諸国へのエネルギー資源の供給停止と、②ウクライナ危機が「新たな後押し」となっている米中間の対立を考えると、エネルギー生産と穀物生産の大国であり、なおかつ軍事大国でもある米国とその通貨ドルは、覇権国と準備通貨としての地位をまだしばらく維持するようにも思えます。
エネルギー研究の大家、ダニエル・ヤーギンの新著『新しい世界の資源地図』では、プーチン大統領が2013年の国際会議の席上で、シェール・ガスについて問われ、(環境問題などを上げ)「色をなして噛みつき(中略)激しく非難し始めた」という逸話がでてきます。「ロシアにとって、シェールは脅威だった」ためです。
また、オバマ政権のドニロン大統領補佐官(当時)の話として、シェール革命のおかげで「国際的な安全保障の目標を追及し、実現しようとするとき、強硬策に打って出られる余地ができた」とし、トランプ政権のポンペオ国務長官(当時)も「これまで数十年間不可能だった国際問題での柔軟な対応が、可能になった」と述べています。
「シェール革命」はゲーム・チェンジャーといわれましたが、それはエネルギー資源の下落につながり、エネルギー産業は苦しみました。また、気候変動意識の高まりによって、エネルギー産業は衰退していくとみなされていました。
しかし、「平和」はみせかけであり、エネルギーの真価があらわになったといえるでしょう。