エネルギー価格の上昇で、ユーロ圏の経常収支も赤字に
ここしばらくのあいだ、円相場とも関連し、日本の経常収支や貿易収支の赤字が話題に上りました。
ここにきて、ユーロ圏の経常収支と貿易収支も、今年3月分が約10年ぶりの赤字となりました。
輸出と輸入に分けて考えると、日本と欧州ともに、輸出額はコロナ前を上回っており、供給網のボトルネックによる影響はあまりみえません。
他方で、輸入額が大きく伸びており、エネルギー資源価格の上昇がその主たる背景です(→穀物価格上昇の寄与度については、食糧自給率が低い日本の場合でも限定的であり、主たる要因は資源価格の上昇です)。
米国のエネルギー資源の輸出は拡大
日本と欧州の1次産品の輸入額増加の裏側では、どこかの輸出額も増加しているはずです。
米国の貿易統計をみると、エネルギー資源の輸出額が大きく増加しています。特に、米国から欧州へのLNG輸出額が拡大しているとみられます。
EUは、ロシア産の天然ガスへの依存を減らすにあたり、LNGの輸入と備蓄の拡大を急いでいましたが、ロシアは先手を打つ形で一部の国(ポーランド、ブルガリア、フィンランド)に対し、天然ガスの供給を止めています。
合わせて、米国の穀物輸出についても足元で伸びていますが、こちらはエネルギー資源よりも生産増加に時間を要するため、短期間で持続的に大きく伸ばすことはできないとみられます。
他方で、ウクライナ危機により、ウクライナ産とロシア産の穀物輸出(小麦は世界輸出の約3割を占める)は大幅に減少した状態が続くとみられ、今後、米国では穀物の生産と輸出の増加がみ込まれます。
2021年時点の米国の輸出額を項目別でみると、「エネルギー資源」(鉱物性燃料など)は第1位で輸出全体の13.7%を、「穀物」は第13位で同1.7%を、それぞれ占めています(→HSコード分類に基づく)。
合わせて、米国は「エネルギー資源」と「穀物」のいずれについても、貿易収支はプラスであり、他国に依存する必要がありません(→米国のような大国は通常、安全保障のために、100%を超える食料自給率の確保が求められます)。
日本や欧州は今後、中東産のみならず、米国産のエネルギー資源への依存度を高めていくことが想像されますし、米国は(1950年代にソ連から欧州への原油輸出が急増したときから)ずっとその方向を望んできました。