世界一シンプルな金融商品のサイクル
今回は「景気循環に沿った世界一シンプルな金融商品のサイクル」をテーマとし、最も代表的な資産クラスである「株式、一般商品、国債、ゴールド」が景気循環に沿って、どの順番で動くのかを考えてみます。結論をいえば、書いたとおりの順番、すなわち「株式→一般商品→国債→ゴールド」の順番で動きがちです。
これを考える理由は、たとえば、「いつゴールドを買うのがよい(かもしれない)のか」、「いつが景気後退に近い(かもしれない)のか」を知るうえで役に立つと考えるためです。
さっそくチャートをみてみましょう。
まず「一番後ろ」のゴールドからさかのぼる
チャート的には、「後ろ」=ゴールドからさかのぼっていくとわかりやすいと思います。
ゴールドの長期チャートをみると、ゴールドのピークは景気後退の「後」にやってくることが少なくないことがわかります。特に最近はそうです。
シンプルな考え方としては、まず、景気後退で利下げが始まり、金利がゼロにまで下がります。しかし、それでは足りないのでお金が発行されます。すなわち、量的金融緩和・QEです。「お金が発行されると、お金の価値が落ちて、ゴールドが上昇する」と考えればよいでしょう。
たしかに、1970~80年代は、金利はゼロにまで下がることはありませんでしたが、1971年のニクソン・ショックは「貨幣発行」そのものでしたし、その後も70年代中盤にかけて緩和的な金融政策が取られました(→最後に、補足説明あり*)。
次に「後ろから2番目」の国債を確認
景気後退の「後」にゴールドがピークを打つ、その前に上昇するのが国債価格です。景気後退に入ると、利下げが起き、景気後退の期間をかけて、金利は低下します。すなわち、国債価格の上昇です。
ここまでの流れと順番を確認すると、「景気後退が起き、利下げによって国債価格が上昇したあとに、貨幣が発行されてゴールドが上昇」します。
「前から2番目」の一般商品を確認
一般商品の長期チャートをみると、「景気後退のなかでピークを打ったり、景気後退の直前でピークを打つ」ことが多くあります。そもそも、1973年や1979年のオイル・ショック、1990年の湾岸戦争などは、商品価格の上昇そのものが景気後退の「きっかけ」であったと考えられます。
原油や銅がわかりやすいと思いますが、(原油のように供給が減少して価格が上がっても、銅のように長期では脱炭素の主役のひとつでも)景気後退に入ると、需要がしぼんで価格に低下圧力が生じます。
一般商品は、景気後退が来て国債がよくなるときに、価格が低下する資産と考えておくのがよいかもしれません。ここまでで、「一般商品→国債→ゴールド」です。
最後に「一番前」の株式を確認
最後に株式は、「景気後退の前でピークを打つ」ことが多くあります。想像のとおり、景気を先読みして動くのが株式といってよいでしょう。
当然ながら、株式には、一般商品の生産に関連するエネルギー・セクターや素材セクターだけではなく、多くのセクターが含まれます。たとえば、住宅や金融セクターなど、他のセクターや景気に先行して動くセクターも含まれます。あるいは、その時々の「ブーム」になるセクターは、他のセクターに先行して上昇し、調整局面でも先行しがちです。
株式には多くのセクターがあり、そのなかには一般商品に先行して動くセクターがあると考えられるため、株価全体も一般商品より先に反応するとみられます。