リセッション回避可能説多数も…市場は信じていないか
世界株式はコロナショック後最大の下落に見舞われた。S&P500指数は年初来20%の下落となり悲観一色となっている。機関投資家の弱気心理を代表する現金比率は6%と2001年の米国同時多発テロ以来の高水準になっている。
リセッション回避が可能とする意見はエコノストの間では多数派であり、FRB始め米国当局もそう主張しているが、株式市場はあまり信じていないようである。
懸念となっていたインフレ…全方面でピークアウト
ただ、株式は往々にして楽観にも悲観にも極端に傾くものであり、絶望的になることはない。一番心配されているのは40年ぶりのレベルまで高まったインフレであるが、すでにピークアウトしつつある。
4月のCPIは8.3%(食品エネルギーを除くコアCPIでは6.2%)だが、年後半には5%台に低下、3年先に2~3%台に入っていくとみられる。金融市場が織り込んでいる長期的物価予想は10年国債利回りと物価連動10年債(TIPS)利回りの格差で観測できるが、それは4月末の3.0%をピークに5月20日時点では2.6%まで低下してきた。
インフレ期待がピークアウトしていく理由として、
①サプライチェーンが原因のインフレは収まりつつあること、
②原油・資源価格高騰もロシア原油代替源の模索に加えて中国・欧州の需要が鈍化することで落ち着くこと
③労働需給ひっ迫の米国では選択的賃金上昇が起きているが、全般的な賃金上昇ではないこと
④長期金利の上昇と株価の下落自体が景気抑制効果を住宅購入などですでにもたらしていること(いわゆる「債券自警団Bond vigilant」 効果)
などが指摘できる。