(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年5月23日に公開したレポートを転載したものです。

金融政策もタカ派バイアスが弱まっていくだろう

インフレがピークアウトとなると、金融引き締め、利上げもどこかで落ち着くことになる。年後半には利上げ予想の一巡感が出てくるかもしれない。2年債利回り2.6%とは、FF金利が2年後に2.6%になるということを市場が織り込んでいる。

 

今後0.5%の利上げ4回という急速な利上げがすでに織り込まれており、これ以上のサプライズを招くタカ派的発言はないだろう。

 

FRBは金融引き締めに遅れ慌てて過度の利上げを余儀なくされ、それは景気を殺してしまいかねないと心配されているが、その可能性は後述する理由により、小さい。加えて企業のイノベーション、生産性上昇により利益成長が続くと見込まれる。

ソフトランディングに株価暴落回避は必須

同義反復(トートロジー)に聞こえるかもしれないが、ソフトランディング失敗の最大条件は株価暴落による経済心理の悪化である。FRBは株価暴落により経済心理が凍り付くことを絶対に避ける、と考えられる。

 

武者リサーチがかねてから主張しているように、今や米国のマクロ政策は銀行貸し出しによる需要創造から資産価格上昇による需要創造へと大きくシフトしてしまっている。FRBが資産価格を金融政策の暗黙のターゲットとしていることは今更変えようはない。

 

米株・住宅価格はバブルでは無い

そして株式、不動産などの資産価格は、3%程度の長期金利を前提とすればバブルとは到底いえず、これ以上の資産価格調整が必要な状況にないことは明白である。

 

[図表4]米国株式のバリュエーション考察→米株はバブルではない
[図表4]米国株式のバリュエーション考察→米株はバブルではない

 

[図表5]米国住宅 利上げで需要ブレーキ、だが住宅不足(空き家減少)で需給強い
[図表5]米国住宅 利上げで需要ブレーキ、だが住宅不足(空き家減少)で需給強い

 

S&P500指数のPERは年初の23倍弱から17倍以下まで低下した。図表4にみるようにFEDモデルで見た妥当株価8465に対して現在の3900ポイントは半分の水準である。また価格が高騰してきた住宅需要は、金利の上昇により一服している。

 

しかし空き家戸数の下落にみるように、住宅不足がもたらす需給ひっ迫が続いており、サブプライムバブルのときのように、利上げで価格を抑制するべき状況にないことは明白である(図表5)。

 

次ページ米国のインフレは「心配無用」なワケ

本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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