金融政策もタカ派バイアスが弱まっていくだろう
インフレがピークアウトとなると、金融引き締め、利上げもどこかで落ち着くことになる。年後半には利上げ予想の一巡感が出てくるかもしれない。2年債利回り2.6%とは、FF金利が2年後に2.6%になるということを市場が織り込んでいる。
今後0.5%の利上げ4回という急速な利上げがすでに織り込まれており、これ以上のサプライズを招くタカ派的発言はないだろう。
FRBは金融引き締めに遅れ慌てて過度の利上げを余儀なくされ、それは景気を殺してしまいかねないと心配されているが、その可能性は後述する理由により、小さい。加えて企業のイノベーション、生産性上昇により利益成長が続くと見込まれる。
ソフトランディングに株価暴落回避は必須
同義反復(トートロジー)に聞こえるかもしれないが、ソフトランディング失敗の最大条件は株価暴落による経済心理の悪化である。FRBは株価暴落により経済心理が凍り付くことを絶対に避ける、と考えられる。
武者リサーチがかねてから主張しているように、今や米国のマクロ政策は銀行貸し出しによる需要創造から資産価格上昇による需要創造へと大きくシフトしてしまっている。FRBが資産価格を金融政策の暗黙のターゲットとしていることは今更変えようはない。
米株・住宅価格はバブルでは無い
そして株式、不動産などの資産価格は、3%程度の長期金利を前提とすればバブルとは到底いえず、これ以上の資産価格調整が必要な状況にないことは明白である。
S&P500指数のPERは年初の23倍弱から17倍以下まで低下した。図表4にみるようにFEDモデルで見た妥当株価8465に対して現在の3900ポイントは半分の水準である。また価格が高騰してきた住宅需要は、金利の上昇により一服している。
しかし空き家戸数の下落にみるように、住宅不足がもたらす需給ひっ迫が続いており、サブプライムバブルのときのように、利上げで価格を抑制するべき状況にないことは明白である(図表5)。