【小学校受験の最新事情】「試行錯誤する・自身で解答を得る」経験が子どもにもたらす〈すごいポテンシャル〉

【小学校受験の最新事情】「試行錯誤する・自身で解答を得る」経験が子どもにもたらす〈すごいポテンシャル〉

近年、小学校受験は過熱する一方であり、世間にもさまざまな対策術や受験のノウハウが溢れています。効率よく解を求め、結果を出すことを求める向きもありますが、子どもたちの今後を考えたとき、決していい方法とはいえません。多くの実体験を通じ「試行錯誤する」「自身で解答を導き出す」という体験こそ、子どもの将来に大きな影響をもたらし、血肉となっていくのだといえます。

「幼児期の体験」が人生に与える影響は計り知れない

夏季講習会中の休み時間、外階段に止まっていた一匹のセミを捕まえて子どもたちに見せると、興奮して触りたいと近寄ってくる子どもたちと、「怖い」といって教室中を逃げ回る子どもたちがいて、教室内は騒然となりました。

 

初めて見る子の多くは、こわごわ羽を触ったりしてなんとか持てるようになりたいと何回も触りに来ます。すでに経験のある子は、セミが逃げないように両方の羽を外側からしっかり押さえて上手に持って友だちに見せます。

 

怖いといって逃げ回っていた子どもたちのなかには、恐る恐る近寄ってきて友だちが持つのを見ています。触りたい気持ちと、どこかで「怖い」と思う気持ちがあって葛藤しているのかもしれません。

 

怖いと思う子どもの多くが、ひょっとしたら子ども自身よりも、お母さまがセミを見たときに尻込みする様子を見て、その大人の対応で怖がっているのかもしれません。

 

また別の日、観覧車の学習をする際に「観覧車に乗ったことがある人、手を挙げて?」と聞いたとき、手を挙げない子が数人いました。理由を聞くと、自分は乗りたいのにお母さまが高い所は嫌いだからダメ…と乗せてもらえない理由をいっています。

 

以前、海に住む生き物の学習をする際に「海に行ったことがある人?」と聞くと、手を挙げない子が数人いました。年長の夏までに、一度も海に行ったことがない子が多いのに驚いたことを記憶しています。「なぜ?」と聞くと「だってお母さんが海は塩でべとべとして気持ちよくないから」と、連れて行ってもらえない理由をいっている子がいました。

 

都会に住む子どもたちは、日常的に自然に触れる機会が少ないため、保護者の方は意図的に外に出ていろいろな経験をさせようと工夫しているように思います。夏休みがその最大のチャンスなのに、2020年からのコロナ感染症対策で思うように外に出られない現状は、子どもの発達にとってもゆゆしきことです。

 

またコロナとは関係なく、セミの話も観覧車の話も海の話も、子どもたちの自然へのかかわり方や、幼児期に経験してほしい活動や周りに対するかかわり方を、大人の事情によって遮断していることがないかどうかを、一度考えるきっかけにしてみる必要はあるかもしれません。

 

幼児期の体験がその後の人生に与える影響は計り知れないことを思うと、自然から学ぶ、経験から学ぶ機会を、大人の事情で奪ってしまってはならないことを痛感します。

 

逆に私の想像を超えて、さまざまな経験をさせようと工夫しているご家庭も多くあります。だいぶ前のことになりますが、航空会社のサービスを利用して一人で大阪に住むおばあさまのところに行ったり、しまなみ海道をご両親と自転車で走破したりした年長児もいました。また、富士山頂までご両親と頑張って登山した子もいます。

 

子どもに目標を与え、つらい場面もあるかもしれませんが、少し頑張らせようという試みは、いま注目されている「非認知能力」を育てる意味では、貴重な体験のように思います。どのご家庭でもできることではありませんが、机に向かう学習だけが受験にとって大事なのではなく、体力も・気力も・最後まで頑張り抜く力を育てることも、幼児期の大切な教育だと思います。

 

そのためには、目標を一緒に立て、その実現に向けてみんなが協力する体制が必要です。年長児の夏は飛躍の夏です。可能な範囲でぜひいろいろ経験させてあげてください。

試行錯誤し、自ら解答を導き出す経験の大切さ

2021年7月におこなわれたサピックスキッズの講演会で、私のあとに登壇されたサピックスキッズの算数を担当するK先生は、最新の入試問題を分析したうえで試行錯誤することの大切さを強調し、「効率のいい解法を教わろうとする姿勢は自ら発想することを放棄することだ」と述べ、自ら解答を導き出すことの大切さを訴えられていました。

 

私が日々の授業で大切にしている「試行錯誤する」時間の確保が、小学校受験だけでなく、中学校受験でも大事であるというお話は貴重です。難しい問題の解法を教師から教わるのではなく、自ら解こうとする姿勢が大切であるということであり、試行錯誤する時間の重要性を改めて実感しました。

 

夏季講習会におこなった新傾向の難問講座で、折り紙を使った線対称の学習をした際のできごとです。入試では次のような問題がペーパー形式でよく出題されます。

 

おり紙を使った線対称

 

●左のお部屋のように、おり紙を真四角に4つに折って線のところを切ると、どんな形ができますか。右から選んで〇をつけてください。

 

 

こうした問題はみんなよくできるので、本当に理解しているのかどうかを確かめる意味で次のようなお手本を示し、このなかのいくつかについて実際に折り紙を切ってもらいました。

 

 

 

ペーパー問題は完璧にできる子でも、実際に切ってもらうと半分以上間違える子がよくみられます。

 

たとえば、一番基本である4つ折りの折り紙から、(1)の丸を切り抜く課題でも、切った結果が(2)になったり、(3)(4)になってしまったりします。今回ご紹介したペーパーの最後の問題ができても、実際の折り紙で(8)や(11)が切れないのです。ではなぜペーパーはできてしまうのでしょうか。

 

たとえば最後の問題を解く際に、消去法で探したり、できあがったお手本に縦横の線を入れて、4つできた形のなかから同じ切り方を探したりすればできてしまう場合が少なくありません。ペーパー問題の一つのやり方として分割する方法は有効ですが、対称図形の意味をしっかり身につけるには、実際に切ってみることができて初めてわかったということになるはずです。

 

この問題は典型的な事例の一つですが、受験に向けた指導のなかでペーパーだけできればいいのではなく、今回の問題であれば、試行錯誤して自分で切ってみることができるようになってほしいといつも感じています。

 

選択肢から選ぶのではなく、実際に自分でやってみることができる…これは他の領域の学習にも共通することだと思います。サピックスキッズの算数担当の先生がお話しされたように、自ら発想することを放棄するような指導にならないように気をつけなくてはなりません。

 

幼児期だからこそ、自分で考える習慣を身につけなくてはなりません。教え込まれた方法は、結局身につかないまま、本試験では応用できないのです。

 

 

久野 泰可

こぐま会代表

 

※本記事は、こぐま会ウェブサイトの久野泰可代表取締役のコラム「週刊こぐま通信」を転載・再編集したものです。

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