コロナ禍からの回復で、右肩上がりだった米国株が、このところ連日、下落を繰り返しています。しかし米国株以上に、日本株のほうが危機的であるという声が聞こえてきます。なぜなのでしょうか。みていきましょう。

外国人投資家は、円建てで見ない

みなさんのなかには、突然ドル建てで比較をしたことに違和感を持つ方もいるかもしれません。しかし、日本株の相場を大きく左右する、外国人投資家の動向を探るには、基軸通貨であるドル建てで考えるべきです。アメリカドル建ててパフォーマンスを検証している彼らにとって株価の高い安い、つまり「買い」か「売り」かをローカルな円建てでは判断しないからです。

 

東京証券取引所の株式分布状況調査によると、2020年度の日本株の外国人保有比率は30.2%。いまや日本株の実に3分の1近くが外国人投資家の手にあります。なかでも、大口取引で相場に影響を与える機関投資家の割合が多いことも見過ごせません。

 

不思議なことですが、日本ではS&P500が10ドル下がっても翌朝のSNSは落ち着きを払っているのに、日経平均が1,000円下がるとそれはもう大騒ぎです。騰落率で言えば、これらは大差ないくらいの変動なのですが、円建てのほうが見た目の桁数が大きい分、インパクトが大きく感じてしまうのかもしれません。そういう意味でも、基軸通貨であるドル建てに計算し直して見るようにすれば、よりグローバルな視点で相場を見ることができるのではないでしょうか?

明暗を分けたコロナ禍への対応

相場の乖離を生んだのは、2020年冬という時期からも分かるように、これはズバリ、コロナ対応の差です。といっても、安易な政府の政策批判がしたいわけではありません。国の取った政策は、両国とも未曾有の金融緩和という点で一致しているからです。

 

この差を生んだのはむしろ、民間企業の対応の違いであり、その背景にある労働法の違いでしょう。

 

アメリカでは、コロナ禍により世界的に経済活動がストップしたときにドラスティックなレイオフ(雇い止め)を行い、経済活動再開に合わせ、金融緩和で企業に回った資金をもとに再雇用を加速しました。失職した人が再び職に就いたわけですが、人材不足もあって多くの人がレイオフ前よりも2~3割高い給料を手にしたと言います。

 

こうした人件費上昇や、生産停止期間の影響による在庫不足などが、モノやサービスの価格上昇につながり、米国経済は一気に回復しました(勢いがありすぎてインフレに陥っている側面もありますが……)。

 

一方、日本はというと、アメリカのように思い切って雇用調整することができません。社員を守るというと聞こえはいいのですが、売上が芳しくない間も人件費を下げられず、経営に大きなダメージを受けました。これでは、企業が内部留保を多く保とうと思うのも無理がない話で、コロナが明けても、インフレが襲来しても給与をあげられません。

 

そもそも雇用を守っているため、再雇用による給与水準上昇もありません。給与が上がらないと購買力も上がらないため、物価も変わらず、よって、アメリカのようなV字回復を果たせず、経営体力だけが削られたのでした。

 

少なくとも、グローバルに経済をウォッチしている外国人投資家はそのように判断したのでしょう。先ほどのグラフがそう証明しています。

株の前にそもそも……

最後に、恐怖画像をお見せして記事を締めたいと思います。下のグラフ(図表2)は、ある金融商品のドル建ての価格推移です。何の投資だか分かりますか? そしてこの商品を、いま買いたいと思いますか?

 

【図表2】

 

答えは「日本円」です。見慣れたドル円のグラフを逆さにするだけで、恐ろしいグラフになりますね。景気が悪く、通貨も弱い。グローバルな投資視点に立った際の日本株にとっての逆風は、これらかも思いのほか強くなりそうです。

 

 

浅井 聡

株式会社オープンハウスウェルス・マネジメント事業部

 

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