アメリカの金利引き上げにより日本との間で大きな金利差が生じ、円安圧力が強まっています。しかし日米金利差による円安は、そろそろ終了するだろうと、ストラテジスト・浅井聡氏ははいいます。一方で、金利差による円安が終わったとしても、日本経済に期待はできないといいます。なぜなのでしょうか。

金利差由来の為替変動には賞味期限がある

底が抜けたような「円安」に、ついに日銀(正確には財務省)がドル売り円買いによる大型為替介入をはじめました。為替に興味が集まっているタイミングなので、為替についてみていきましょう。

 

現在のドル高円安の主因は金利差です。2つの通貨間に著しい金利差がある場合、金利の低い通貨を売って、金利の高い(つまり預金利回りも高い)通貨を買うことで利益を得る「キャリー・トレード」が成立します。利上げを繰り返すアメリカと、ゼロ金利を頑なに守る日本との間には大きな金利差があり、それが円が売られる原因になっているというストーリーは、多くのメディアが報じている通りです。

 

しかし、実はこの金利差による為替効果には賞味期限があることはあまり知られていません。先の理屈では、少なくとも金利差拡大が見込まれる市場環境であるかぎりはキャリー・トレードは成立するため、為替格差も拡大し続けるはずですが、歴史を振り返ると理屈通りになっている期間はごくわずかです。

 

【図表1】は、日米金利差のグラフと名目ドル円相場のグラフを重ね合わせたものです。そのうえに、金利差と為替差が順行しているとみなせる期間を緑に、逆行しているとみなせる期間を紫にマークしました(着色は私・浅井の主観です)。これを見ると、理屈通りの動きが見られる緑の期間は意外と短いことが分かります。2000年代に入ってからは、長くてせいぜい2年、ほとんどは1年未満で終わっています。

 

出所:Federal Reserve Economic Data
【図表1】 出所:Federal Reserve Economic Data

 

これは、目先の金利格差で稼いでやろうという投資家たちの資産よりも、長期的な視点でより有望な国に投資したいと考える投資家たちの資産のほうがいずれ勝ることの現れなのでしょう。

「金利格差」が期限切れ…「実体経済」で比較される

アメリカの利上げ開始から既に半年以上が経過しているため、そろそろ金利格差による為替への影響の賞味期限が近づいていると言えるでしょう。では、期限が切れた後に為替を左右する要因はなんなのでしょうか? それは言うまでもなく、実体経済です。その実体経済を測る指標としては、なんと言っても指標の王様とも言うべきGDPではないかと考えています。

 

2021年の実質GDP成長率を比較すると、アメリカの+5.7%に対し日本はわずか+1.6%。その差は歴然です。中身を比較しても、アメリカには好材料が山ほどあります。

 

●コロナショックからいち早く回復し、国内外の移動や経済活動を開放

●コロナショックによる、レイオフからの大量雇用により給与水準が上昇

●ロシア制裁を追い風にした、資源輸出国化

●ドル高により輸入インフレなし(原材料を輸入に頼る製造業の傷が浅い

●他通貨圏に対する高金利を背景に、対内投資が促進

 

日本はというと、以下の通り産業界が疲弊しています。

 

●継続する量的緩和政策にて、資金調達力があるものの実際に設備投資案件が少ない

●資源高+輸入インフレで製造原価が高騰するも、消費者物価に反映できず生産者が疲弊

●雇用を守るも賃上げできず

●コロナショックで中国からの原材料仕入れが停滞(他の仕入れ経路も開発が不十分)

次ページ物価指数のタイムラグにも現れる、日本経済の弱み

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