(※写真はイメージです/PIXTA)

報道番組等で、しばしば「経済成長率」という言葉が登場します。経済成長率とは実質GDPの増加率のことで、日本は不況の影響で経済成長率も鈍化している状況です。しかし「経済成長率ゼロ=前年並み」は安定を意味するものではなく、失業率の増加等の現象が見られます。なぜ現状維持ではなく悪化するのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

高度成長期より成長率が下がった理由は「技術の普及」

新型コロナ以前の日本経済は、1%程度の経済成長率でも労働力不足でした。しかし、高度成長期には毎年10%近い経済成長を続けていたわけです。その最大の違いは、技術の浸透にあります。

 

農作業が手作業からトラクターに変化した高度成長期は、1人当たりの生産量が急増していましたから、需要が増えてもインフレにならずに対応できたわけです。

 

最近では、すべての農家がトラクターを持っていますから、それを最新式のトラクターに買い替えたとしても、1人当たりの生産量はそれほど増えません。だから、需要が1%程度伸びると労働力不足になって供給力がそれ以上増やせなくなってしまうのです。

 

中国の方が日本より経済成長率が高い理由は、中国が日本の高度成長期と似ているからということですし、中国の経済成長率が最近低下しているのは、日本で起きたことと同じことが中国でも起きているからですね。

 

筆者は中国の研究者に「戦後日本経済史を勉強するように」とアドバイスをしていますが、それは中国経済が戦後の日本経済と似たような歩みをしているからなのです。

バブル崩壊後の長期低迷期は、需要不振が生産性を抑制

短期的な景気の変動について語る時には、需要が増えないと生産量を増やす必要がなく、1人当たりの生産量の増加分だけ失業が増える、という点に着目します。

 

しかし、バブル崩壊後の長期低迷期のように、長期にわたって需要が増えないと、企業が新しい機械を導入しなくなるので、生産力が伸びなくなります。最新式の機械を導入する工場が少なかった、ということですね。労働者が余っていたため省力化のための自動食器洗い機を導入した飲食店も多くなかったでしょう。

 

したがって、ゼロ成長が長期にわたって続いたわりには失業者が増えませんでしたし、日本は諸外国より生産性が低いといわれるようになったわけですね。

 

今後は、需要は増えなくても少子高齢化で労働力が不足する時代になり、企業が自動食器洗い機のような省力化の機械を導入するようになれば、日本経済の生産性が上がっていくと期待しているのですが、どうなりますか。

 

今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解です。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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