日本人の平均年収が減りはじめたのは1997年以降のことです。バブルを迎えて日本経済が世界のトップクラスになり、しかも1997年時点では一人当たりGDP(国内総生産)が世界4位だったにもかかわらず、平均年収は14位に甘んじていました。より大きな問題は、日本人の給料がその後上がっていないことです。坂田拓也氏が著書『日本人の給料 平均年収は韓国以下の衝撃』(宝島社)で解説します

「2000万円でも中流?」日米はこんなに差が

■ニューヨークは年収2000万円でも「中流層」

 

「ニューヨーク州の企業に車で通勤している知人のアメリカ人男性上級マネージャーは、年収が推定12万ドル(1320万円)を超えていますが、教育費や自動車価格の上昇、医療保険料の高騰、そして物価の上昇により『家計が苦しい』とこぼしています。マンハッタンの平均家賃は2008年のリーマンショックの影響で2009~11年に下がりましたが、その後は上がり続け、コロナ禍前の2019年末で3300ドル(36万3000円)です。

 

ニューヨーク市は高額所得者が多く、年収20万ドル(2200万円)近くても『中流層』に分類されるのです」(肥田氏)

 

米ピーターソン国際経済研究所によれば、コロナ禍により2020年は失業率が一気に上がったが、今年(2021年)に入ると経済が回復、離職やもともとの人手不足により労働市場が逼迫して、5~7月のわずか3カ月間で名目賃金は2.8%上昇した。しかし物価の上昇を加味すれば実質賃金は下がったという(2021年7月30日付け)。

 

「都市部では空前の人手不足で賃金がかなり上がりましたが、インフレで食費やガソリン代もどんどん高くなりました。コロナ禍でも経済回復が進むと物価が急激に上昇し、小房にカットされたブロッコリーが一晩で1ドル上がっていたのには驚きました。ニューヨークの一般世帯にとっては、10年前に比べて生活が楽になったという実感はないでしょう。しかしウォール街(金融街)や大手テック企業に勤めるエリート層、または企業幹部になれば話は別です」(肥田氏)

 

役職別の平均年収を見ると、マネージャー全般(管理職全般)で1391万円、なかでもファイナンシャル(金融)マネージャー1667万円、マーケティングマネージャー1699万円、コンピュータ・情報システム(IT関連)マネージャー1779万円が高い。

 

「日本と大きく異なるのは、アメリカでは、差別による解雇を除けばほぼ自由に雇用調整できるため、企業の成長に貢献しにくくなった高給のベテラン社員は解雇される一方で、有能な人材は獲得競争になって給料が上がることです。より大きく見れば、日米格差の背景には移民の存在があります。アメリカでも高齢化は進んでいますが、若く有能な移民が、労働力の頭数として経済を支えているだけではなく、シリコンバレーやニューヨークでイノベーションやスタートアップ(起業)を生み出す源泉になっています」(肥田氏)

 

坂田 拓也
フリーライター

 

 

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本連載は北見昌朗氏の著書『日本人の給料 平均年収は韓国以下の衝撃』(宝島社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本人の給料

日本人の給料

浜矩子、城繁幸、北見昌朗、坂田拓也、野口悠紀雄 ほか

宝島新書

日本人の平均年収は20年の長きにわたり長期減少が続いている。2000年代には世界経済が伸長して日本の企業の業績も向上したが、給料は上がるどころか、下がり続けた。 日本人の給料減少は先進諸外国と比較すると際立ってくる。…

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