(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、大幅に調整した欧米株式市場。こうした局面で投資戦略を練る場合、どのようなポイントに注目すべきでしょうか。ロング、ショートそれぞれの視点から中村氏が解説します。

ショート戦略成否のカギは「市場心理」の客観的把握

上述のサステナブル投資とは異なる視点、特にタクティカルなヘッジファンドの視点からみると、異なるESG投資のアイデアがもたらされる。

 

ヘッジファンドのフローに基づくショート戦略のアイデアの源泉の1つとしては、たとえば、ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、欧米によるロシアへの経済制裁が一層強まることで、仮に年後半から来年にかけてのリスクシナリオが顕在化した場合(リセッションを想起させるようなグローバル景気の減速度合いが強まり、投資家の不安心理が極度に高まった場合)、本当にESG投資において期待されるダウンサイドリスクの抑制効果が発揮されるのか、否かという点があろう。

 

つまり、市場心理が極端に悪化するような場面(たとえば、ITバブル崩壊やリーマンショック級の市場調整)においても、ESGのサステナブルの側面や、一喜一憂しない長期スタンスを踏まえた投資家行動を背景に、ESGファンドからの資金流出が落ち着いたものとなり(需給面からの株価の下落圧力が低下)、ESG投資においてリスク抑制型のプロファイルを生成できるのか、それとも否かがショート戦略の成否のカギになる。

 

ヘッジファンドには多様なショート戦略の手法やアイデアの構築方法があり、ファンドマネージャーは、もっともらしいといえる方向性や水準が意識される「市場のコンセンサス」を掴む必要がある。

 

そのうえで、コンセンサスからどのタイミングで、またどの程度乖離する可能性があるのかについて、多様な手法を活用し、高い確度で掴むことにより、パフォーマンスを高めようと日々努力していることについて忘れてはならないだろう。

 

ESG投資においては、「こうあってほしい、こうなるはずだ」という市場の確証バイアスがあるといわれることも多いが、そのバイアスが崩れるタイミングが来るのか、来ないのか……ESGを1つのモメンタムファクターとして捉えた場合、こうした視点がヘッジファンドの1つのショートアイデアになりうることを頭の片隅に入れて今後の投資に臨んでいきたい。

 

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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