(※写真はイメージです/PIXTA)

高血糖状態に陥る理由は、「炭水化物や甘いものを摂り過ぎたから」ではありません。私たちの身体には、血糖を下げるホルモン・インスリンを筆頭に血糖を一定の範囲内に保つ機能があります。健康な人であれば、一時的にたくさんの炭水化物を食べたとしても、一定の範囲以上に血糖が上がることはありません。高血糖症の主原因は、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」です。インスリン抵抗性はなぜ起こるのか、防ぐにはどうすればよいのか、見ていきましょう。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

脂肪細胞の悪玉化を防ぐためには?

今回の説明から、脂肪細胞の悪玉化を起こさないようにするためには大きく二つのポイントがあることが分かっていただけると思います。

 

一つは、脂肪細胞に過剰なカロリーが蓄積しないようにすることです。

 

これまでは、太らないようにするためには脂肪の摂り過ぎに気をつけることが大切だと言われてきました。もちろん、脂肪も摂り過ぎると中性脂肪として蓄積するのですが、それだけではなく炭水化物を摂り過ぎることも、脂肪が蓄積する原因になるということが分かってきました。

 

「しかし、前回の記事の中で炭水化物を摂っても血糖は上がらないと言ったじゃないか」と思われた方は、きちんと記事を読んでくださっている方だと思います。

 

確かに、健常な人が炭水化物を摂ってもすぐに高血糖や糖化が起こることはありません。しかし、それはあくまで短期的な話です。慢性的に炭水化物や脂肪を摂り過ぎると、脂肪細胞が膨張してインスリン抵抗性をきたし、やがては高血糖になるということです。

 

つまり短期的に見た作用と長期的に見た作用とが違うということです。

 

脂肪細胞を悪玉化させないようにするためのもう一つのポイントがあります。

 

同じようにカロリーを摂っていても、脂肪細胞が善玉の状態なのか悪玉の状態になっているかで脂肪の蓄え方が変わります。そして、この脂肪細胞が悪玉化する原因はリポ多糖という炎症物質が身体にたくさん溜まっているかどうかです。

 

このリポ多糖という物質は、腸内細菌の一つであるグラム陰性桿菌という菌の表面にある物質です。つまり、腸内環境が悪化して、グラム陰性桿菌が増加し、さらに腸管のバリア機能低下することで、リポ多糖が身体の中にたくさん流入し、脂肪細胞に炎症を起こすわけです。

 

脂肪細胞の悪玉化が起こるかどうかに、腸内環境が密接に関わっているということです。

「食物繊維をたくさん摂ること」が重要

「カロリーを摂り過ぎないようにし、腸内環境を整えることがいいことは分かった。でも、だからどうすればいいのかが今ひとつ分からない」と思われている方もいるかもしれません。

 

ここで、以前にも書いた内容をもう一度思い出していただきたいのです(参照記事については記事末尾にリンク先を載せておきます)。

 

同じ食事をしていても太りやすい人と、太らない人とがいます。そして、人が太りやすいかどうかは、単に摂取しているカロリーで決まるのではなく、腸内の「痩せ菌とデブ菌とのバランス」によるということが分かってきています。ここでも腸内環境が重要な要因になっているのです。

 

そして、痩せ菌を増やすためには、食物繊維が重要です。

 

さらに、リポ多糖の血中濃度を上げないためには腸管のバリア機能を高めることが大切です。腸管の粘液の分泌を刺激しバリア機能を高めるアッカーマンシア菌は食物繊維が好物なのです。ここでも食物繊維が重要なキーワードです。

 

身体のバランスを整える話をするときに、必ずと言っていいほど腸内細菌の話が出てきます。そして、食物繊維がそれほど大事だということです。

 

私は思うのです。「食べる」ということは、幸せを感じるためのとても重要な要因です。カロリーの摂り過ぎが良くないと分かっていても、美味しいものが目の前に出てくるとついつい食べ過ぎてしまうのが人の性(さが)だと思います。私は、いくら健康のためだと言っても、食べたいものをぐっと我慢していつも空き腹を抱えている状態が本当の幸せだとは思いません。やはり、美味しいものを食べることは人間にとっての大きな幸せだと思います。

 

その食事に色々と制限を作ることは、いくら健康に良いとは分かっていても、幸せを削られることになるのではないでしょうか。

 

科学的なエビデンスに基づいても、食物繊維をしっかりと摂ることはさまざまな面から健康にいいことは間違いありません。このことの重要性を考えれば他のことはあまり重要でないとさえ思えてきます。つまり、「あれは食べてはダメ、これもダメ」と細かいことを気にするよりも、食べ過ぎないように気を遣いながら何でもバランスよく食べ、食物繊維を毎日しっかりと摂ることを意識していれば、幸せ度を下げることなく、健康に長生きできるのではないかと思うのです。

 

■食物制限をしなくても、「何を食べても健康な状態になること」は可能

現在、何らかの食材でアレルギー症状や身体の不調が起こる場合は、やはり腸内環境のバランスが崩れている可能性があります。これまではアレルギーや不調の出る食材が原因であると思われて、その食材を制限せざるを得なかったのですが、本当の原因は食材にあるのではないということが分かってきました。

 

そしてそれをきっちりと治療することが可能な時代になってきました。正しい治療を行うことで、食物制限をしなくても、何を食べても健康な状態になることは可能です。

 

そうして自分自身の身体のバランスを整えることで、幸せな健康長寿を手に入れていくことに、私の書く記事が少しでもお役に立てればと思います。

 

最後に、ひと言だけ強調したいことがあります。今は、健康に関しての情報が溢れている時代です。ネットを検索すれば今回書いたような内容はいくらでも見つけることができるでしょう。しかし、これらの情報には非常に偏った意見が多いことも事実です。

 

たとえば、小麦や白米を食べただけで、すぐに高血糖になったり、身体が「糖化」して合併症を起こすような書き方がされていたりする情報があります。短期的な視点と長期的な視点とがごちゃ混ぜになっていることが原因です。それが、医師が書いたものであれば余計に弊害が大きいと言えるでしょう。一般の人には、医師が書いているのだから正しいだろうと思うのも当然です。

 

 

しかし、今回書いたようにそんなに簡単には糖尿病になったり身体が糖化したりはしないのです。それよりも食べ過ぎないようにバランスよく食事をすることのほうが大切です。

 

糖質の摂り過ぎが良くないといっても、一番問題なのは精製した小麦や米の摂り過ぎなのです。精製されていない雑穀米や玄米、あるいはオーツ麦、スペクト麦などの穀物類は食物繊維もたくさん含まれており、腸内環境を整える上ではプラスに働きます。単純に糖質というのではなく、食物繊維が含まれているものなのかどうかを区別して、必要なものはきっちりと摂取することも大切です。

 

極端に炭水化物や小麦、白米などを制限することがかえって身体のバランスを崩すことにもなりかねないということを知っていただきたいのです。極端な意見に対しては、すぐに信じるのではなく、疑いを持っていただくのがいいと思います。

 

ご参考として、今回説明した内容に関連する過去記事を載せておきます。興味のある方は時間のあるときに読んでみてください。

 

<関連記事>

●高血糖症はどうして良くないのか?

●太りやすい人と太りにくい人との違い

●いろいろな食材で体調が悪くなる原因と対処法

●健康な人にも「食事制限」は必要か?

 

小西 康弘

医療法人全人会 小西統合医療内科 院長

総合内科専門医、医学博士

 

藤井 祐介

株式会社イームス 代表取締役社長

メタジェニックス株式会社 取締役

株式会社MSS 製品開発最高責任者

 

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