相場は不安定だが…「金」と「日本株」のエントリーポイント【シニアストラテジストが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。終わりのみえないウクライナ問題や米国を中心とした世界的なインフレ圧力の高まり……先行きが不透明ななか、どのような運用戦略をもち相場に臨むべきか。今回は金相場と日本株の見通しについて、中村氏が分析します。

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「有事の金買い」ののち、利益確定の動き強まる

金価格(NY金先物価格)は、ロシアによるウクライナ侵攻など地政学リスクの高まりを受け「有事の金買い」の動きが強まり、3月8日に一時2,078.80ドルをつけた(出所:BloombergティッカーGC1)。

 

その後は利益確定売りに押され、3月29日に一時1,900ドルを割り込んだものの、再び持ち直しの動きをみせ、4月18日には2,000ドル程度まで回復した。4月21日の取材時点の終値は1,940ドル程度となっている[図表1]。

 

[図表1]金先物価格と原油先物価格の推移
[図表1]金先物価格と米実質長期金利の推移

 

引き続きFRBによる継続的な利上げやバランスシートの縮小ペースの加速が懸念されることに加え、世界経済の正常化が米実質長期金利に上昇圧力をもたらすことで金価格は抑制されるとの見方をメインシナリオに置く。

 

とはいえ、原油を含めたコモディティ価格の上昇・高止まり等を背景としたFRBによるオーバーキルリスク(金融引き締めにより景気を過度に冷やす懸念)に加え、ロシアへの経済制裁強化を受けたグローバル経済の減速・失速(リセッションの懸念を含む)が先行きの米実質長期金利に下方圧力をもたらすリスクシナリオの可能性も残っている。

 

実際、足元では米実質10年債利回りのマイナス幅が急速に縮小するなかでも金価格が上昇する展開となっている点には留意が必要だろう。通常、金価格と米実質長期金利との間に逆相関(異なる方向の値動き)の傾向がみられるが、足元では順相関(同じ方向の値動き)の傾向が見受けられる。

 

リスクシナリオが顕在化した場合、VIX指数(恐怖指数)上昇と原油価格の急落および金価格の上昇による金/原油倍率(金価格÷原油価格)の急上昇が生じる恐れがあるとみる。このように先行きの景気後退につながるリスクが残るなかでは、投資家によるヘッジ需要が金の下値をサポートするとみる。当面は1,900~2,100ドル程度を想定し、投資に臨みたい[図表2]。

 

[図表2]金/原油倍率とVIX指数の推移
[図表2]金/原油倍率とVIX指数の推移

 

月次ベース(月末終値)の金価格と米長短金利差(図表3。米10年債利回りと米5年債利回りとの差)の推移をみると、逆イールドが発生した後、米長短金利差が拡大する過程で金価格が堅調に推移するといった経験則も見受けられる。

 

ちなみに逆イールドとは、短期金利が長期金利の水準を上回る状態を指し、先行きの景気後退のシグナルとして捉えられることも多い。

 

IMFは4月19日に世界経済見通しを公表した。前回1月の公表数値と比較し、2022年の世界の実質成長率見通しを0.8ポイント引き下げた。また2023年の同見通しも同じく0.2ポイント引き下げた。

 

ロシアのウクライナ侵攻を背景に資源高を通じたインフレが加速し、各国中銀による利上げが景気減速をもたらすとの見立てだ。

 

OECDの世界の景気先行指数も昨年ですでにピークアウトしており、先行きの景気の減速度合い(落ち込みの程度)によっては、年後半にかけて金価格は2,100ドルを超える強気な展開もあり得よう。

 

[図表3]金価格と米長短金利差の推移
[図表3]金価格と米長短金利差の推移

東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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