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足元のREIT指数は2,000ポイントをはさんでの動き
東証REIT指数は、3月中旬のFOMCのイベントリスクを通過したことで反発の動きを強め、3月30日に一時2,047.99ポイントを回復した。足元では2000ポイントをはさんでの動きとなっている(4月13日取材時点)。
指数ベースではグローバルで見たイールドスプレッド(予想分配金利回り-10年国債利回り)面での割安感や国内の経済正常化の進展(政策期待を含む)が下値を支えるとみており、当面の下値を1,950ポイント程度、上値を2,050ポイント程度と想定する。
指数寄与度の大きいオフィスREITのファンダメンタルズ面の改善が鈍いことから、仮に2,050ポイントを超えた場合でも心理的な節目である2,100ポイント程度が上値目途になるとみている。
一方、仮に米長期金利の上昇を受け、(米国REITの下落を通じて)J-REITにも調整圧力がかかった場合でも3.5~4.0%程度の予想分配金利回りやグローバルで見たイールドスプレッド面での割安感が引き続き下値を支えるとみる。
加えて、3月は銀行などの決算対策売りなどからJ-REITの需給面も悪化しやすく、上値は抑制されやすいとみていたが(実際の数値は後述)新年度以降は再び銀行など金融機関からの資金流入も期待できると考える。そうした点も踏まえれば1,950ポイント割れでは買いが入りやすいとみる。
東京都心5区の空室率は2ヵ月ぶりに下落
J-REITの取得資産の概ね4割を占め、指数ベースでの影響度が大きいオフィス市況(東京都心5区の統計)についてフォローしたい。
2022年4月7日に三鬼商事が東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の3月時点のオフィスビル平均空室率と賃料を発表した。空室率は6.37%(前月比-0.04ポイント)と2ヵ月ぶりの下落となった[図表1]。3月は大型解約の影響が少なかったこと等が主な要因となった。
新築ビルの3月時点の空室率は19.99%[図表2]。前月比+3.09ポイント)。3月は新築ビル2棟が募集面積を残して竣工したため同空室率は上昇した。既存ビルの3月時点の空室率は6.23%(前月比-0.06ポイント)。3月は拡張移転や建替え予定ビルからの移転などによる成約の動きがみられた。
平均賃料(3.3平方メートルあたり)についても20,366円(前月比-52円)となり、20ヵ月連続して下落した。5区別の空室率を見ると、IT・スタートアップの多い渋谷区の空室率が再び下落に転じたが、(空室率が最も高い)港区の空室率は依然として高止まりしている[図表3]。
また賃料の前年比をみると底打ちはしているものの、足元の港区や渋谷区などのモメンタムは弱い[図表4]。オフィスREITのファンダメンタルズの改善度合いは鈍いと判断し、中立スタンスを維持する。