長期投資は「100万分の1」オーナー社長になること
オーナー社長は、企業を設立する費用をすべて自分で負担しますが、企業の生み出した付加価値の中から銀行に金利を支払い、労働者に給料を支払い、残りはすべて自分のものとなります。
オーナー社長が株式を公開すると、庶民が発行済株式の一部を購入することができるようになります。「100万分の1オーナー社長」が大勢登場するわけです。彼らは、オーナー社長と同じ立場です。違いは所有している株式の数だけです(笑)。
つまり、彼らが永遠に株を持ち続け、会社が解散するときに残った資産の分配を受けるのであれば、彼らはまさにオーナー社長と同じ立場なのです。
オーナー社長は、リスクを覚悟で設備投資等をして利益を稼いでいるわけですから、ある意味ではバクチをしているわけですが、オーナー社長のことをバクチ打ちと呼ぶ人よりも「実業家」と呼ぶ人の方が圧倒的に多いはずです。
そうであれば、零細株主もバクチ打ちではなく、「零細実業家」と呼ばれるべきです。株をずっと持ち続ける、という前提であれば。
オーナー社長との違いは「株価が変動する」という点
オーナー社長と零細投資家の違いは、会社が儲かっても株価が暴落して損をするという可能性があることです。もっとも、長期で株を持っていれば、実際の株価は「適正な株価」を下回ることばかりではなく、上回ることもあるはずです。
したがって、会社が儲かって内部留保をした分だけ「適正な株価」が上昇していくとすれば、長期保有している間に株価が適正株価を上回ることがあるでしょうから、その時に売れば儲かる、という事になるわけです。
もちろん、その時にも売らずにその後の配当や内部留保による株価上昇を期待して持ち続ける、という選択肢ありますね。
ちなみに「配当を受け取った分は株価が値下がりしても気にしない」という認識は重要です。値下がりしても気にしないと決めているのに、実際には内部留保の増加によって株価が上がっていく場合が多いでしょうから、素直に喜びましょう(笑)。
内部留保が「株価の上昇要因」になる理由
企業が利益を配当せずに内部留保すると、株価を押し上げる力となります。それを理解するためには、2通りの考え方が可能です。
ひとつは、ほかの条件が同じなら、内部留保によって純資産(自己資本ともいう)が増えた会社のほうが、増えない会社より株価が高いのが当然だから、ということです。
株価が割高か割安かを判断する重要な材料のひとつにPBRがあります。株価が1株あたり純資産の何倍であるか、という計算結果なのですが、これが一定だとすれば、内部留保によって純資産が増えた会社の株価は高いのが当然だ、ということになるわけです。
もうひとつは、内部留保された資金が設備投資に使われて将来の利益を増やしたり、借金の返済に使われて将来の利払いを減らしたりする事が期待できるので、企業が利益を内部留保すれば将来の儲けが期待できるから高くても株を買おうという投資家が増えるからです。
本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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