投資初心者は「投資の目的」を明確にしておこう
株式投資というのは「株を買って、売る」という行為ですが、目的は多様です。投資を始める初心者は、自分がなんのために投資をするのか、目的をはっきり認識しておくとよいでしょう。
筆者が最も頻繁に提案するのは「老後資金を守るための運用」です。大切な老後資金ですから、ガツガツ儲けようとしてリスクを背負い、大損してしまっては大変です。それよりも、「銀行預金はインフレに弱いリスク資産だから、全額を預金で持っているより株なども少し持っておいた方がむしろ安全」という観点からの投資です。
守りの投資の際には、銘柄分散と時間分散が重要です。多くの銘柄の株を買えば、上がる株も下がる株もあり、時間をかけて少しずつ買えば、高いときも安いときも買うので、大儲けは狙えませんが、大損のリスクが小さくなりますから。なお、実際に多くの銘柄の株を買うのは大変なので、ほぼ同様の効果が期待できる「投資信託の積み立て投資」をお勧めします。
一方、攻めの投資にはリスクが伴うので、大切な老後資金ではなく、小遣いの範囲内で楽しむことをお勧めします。攻めの投資には、短期売買と長期投資があります。「値上がりしそうな株を買って、値上がりしたら売り抜けよう」というのが前者、「儲かりそうな株を買って、長期保有しよう」というのが後者です。
前者については、ケインズが株価を美人投票に喩えたことをしっかり認識して、「真実を追求するよりも、他人の噂を探ろうと努力する」ことが重要でしょうが、本稿では短期投資については論じないことにします。
なお「長期投資による〈バクチ〉」は、ケインズの美人投票とは異なり、「10年後も利益を稼いでいそうな企業の株を買う」ことが重要です。といってもさまざまで、「10倍になるか0になるかわからない、新興ハイテク企業の株を買う」投資もあれば、「数年後に株価が5割上がると期待して、そうなったら売ろう」という投資もあり、「別に値上がりしなくても、配当や株主優待がもらえるから銀行預金よりいい」というレベルの投資もあります。投資を始める前に、自分がどれを狙うのか、よく考えることが重要でしょう。
実情がわかる「自社株」は投資しやすいが…
株を買うとなると、会社について調べる必要がありますが、慣れない人にとっては結構むずかしい作業かもしれません。その点、自社の株であれば、投資先の様子がわかりますから、初心者でも投資を始めやすいかもしれません。愛社精神から買う人もいるでしょう。しかし、筆者は自社株買いはお勧めしません。
かつて山一證券が倒産したときに元社員から聞いた言葉の受け売りですが、「会社が儲かれば給料もボーナスも増えて株価も上がるが、会社が損すれば給料もボーナスも減って株価も下がる(なくなる)」からです。「分散投資」の発想の真反対なわけです。
それでも「自社株を買って、会社に愛社精神をアピールしたい」「従業員持株会に加入すると会社から補助金がもらえる」から自社株を買う、という人については、本稿はコメントを差し控えます。