(※写真はイメージです/PIXTA)

後継社長が決まったら早期に知らせて信頼関係の構築に努めるのはもちろん、承継後も事業の維持・成長を明らかにするため事業承継計画も周知しておくと、将来に向かって会社が一致団結に向かう可能性が高くなります。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します

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親族・従業員・取引先への周知の必要性

後継者の教育と並行して行いたいのは、親族や従業員、取引先・金融機関に対する調整や事前の協議です。現経営者としては将来を見越して社内外で後継者教育を始めたとしても、周りが理解しないまま時間が過ぎ、承継の直前になった時点で突然知らされても驚くだけです。時間をかけて周知し後継者を受け入れやすい土壌をならしておくことで、承継後の不和を抑えやすくできます。

 

とりわけ、後継者選びは社長の配偶者や子、親戚など親族にとっても関心があり、親族内に株式が分散していると、株主としても無関係な話ではありません。将来の相続にも関係します。現経営者は早期に家族・親族会議を開いて対話を図り、事業承継に向けた考えやその後の会社への関わり方、自身の生活について同意を得ておくことが重要です。

 

従業員や自社の取引先・金融機関にとっても、誰が会社を継ぎ、どのような時間軸で事業承継が行われるかは、無関心でいられないトピックです。従業員からすると後継者候補が誰なのかによってモチベーションは上下するでしょうし、会社が今後発展に向かうのか、それとも下降線を辿るのかなど、思惑は交差するでしょう。

 

早期に後継者候補を知らせて信頼関係の構築に努めるのはもちろん、承継後も事業の維持・成長を明らかにするため事業承継計画も周知しておくと、将来に向かって組織が一致団結に向かう可能性が高くなります。家庭的な雰囲気が残る中小企業であればあるほど、こういった心づかいが求められると思います。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

取引先や金融機関に対して、事業承継の話を打ち明けることが信用問題につながると考え、あえて避ける経営者もいるようですが、それは間違いです。彼らからすると、高齢になった経営者が事業承継の問題について触れない方が、リスクと捉えます。

 

むしろ、後継者候補を紹介し、事業承継計画を示した方が、将来にわたる取引関係の継続について前向きに考えるでしょう。課題があるのなら、金融機関が提供する事業承継サービスを勧めてくれるかもしれません。ステークホルダーから理解・協力を得るためにも、早期に説明すべきでしょう。

 

そう考えると、社内での後継者教育は経営ノウハウや実務を学ぶというだけではなく、従業員や取引先に対する顔見せ、人脈構築の意味でも効果を期待することができます。事業承継前から人間関係があることで周りも受け入れやすく、パーソナリティを知ってもらうことで、承継後の円滑な事業展開に寄与するはずです。

 

次ページ事業承継における具体的な手続き

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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