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本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。※いかなる目的であれ、当資料の一部又は全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。

インフレが落ち着くにはなにが必要か

インフレが落ち着くにはなにが必要でしょうか。

 

[図表5]にとてもシンプルに整理するとおり、インフレが落ち着くためには、①総供給が増えるか、②総需要が抑制されるかのどちらか、あるいは両方が必要です。

 

[図表5]「インフレが落ち着く」には、何が必要か
[図表5]「インフレが落ち着く」には、何が必要か

 

では、総供給が増えるには、なにが必要でしょうか。

 

[図表5]に示したとおり、現在の世界経済において総供給が増えるには、3つのことが必要と考えられます。

 

まずは、①新型コロナウイルス・パンデミックが収束し、生産や物流が妨げられない状態が必要です。次に、②ウクライナ・ロシアの関係において、平和が戻り、世界貿易が元の状態に戻ることが必要です。さらに、③主要国で労働供給が増えることが必要です。

 

すなわち、いままでインフレの要因になってきたことが逆に向かえばよいわけです。

 

それらは可能でしょうか。

 

以下に筆者なりの考えを述べますが、ぜひみなさんご自身でお考えいただきたいです。

3つのインフレの要因は解消するか

まず、①新型コロナウイルスは収束しそうにありません。先進国でもそうですし、とくに「世界の工場」である中国では、「ゼロ・コロナ政策」が取られている一方で、ウイルスには国境はないため、今後とも、ロックダウンと生産の停滞が断続的に生じると考えておくほうが自然でしょう。

 

[図表6]中国の新型コロナウイルス新規陽性者数(7日間移動平均値)
[図表6]中国の新型コロナウイルス新規陽性者数(7日間移動平均値)

 

次に、②ウクライナ・ロシアの関係において、平和が戻り、世界貿易が元の状態を取り戻す状況は見通せません。ウクライナ産の小麦は今夏から今秋にかけて収穫不足が懸念されています。

 

また、原油についても、ロシア産原油の禁輸措置が経済制裁の次の一手と見られるなか、石油輸出国機構(OPEC)は増産の追加におよび腰で、原油備蓄の放出では補いきれないと見られています。

 

[図表7]国際商品価格と日本国内のインフレ率
[図表7]国際商品価格と日本国内のインフレ率

 

最後に、③主要国の失業率はかなり低水準で完全雇用に近い状態であり、労働力の供給が増加する余地は限られます。

 

[図表8]日米欧の失業率
[図表8]日米欧の失業率

総供給が増えないなら、総需要を抑制するほかない

以上をまとめると、これまでのインフレの要因と言ってもよい3つの供給サイドの事象を考えると、どれも事態が改善していくようには思えません。

 

総供給が増えなければ、総需要を抑制するほかありません。それが、いま行われようとしている金融引き締めです。

 

ポートフォリオを十分に分散したうえで、インフレ率の動向を見守りましょう。

 

 

重見 吉徳

フィデリティ投信株式会社

マクロストラテジスト
 

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