前回は、両建て取引を活用した「つなぎ売り」で優待の権利を狙う方法を説明しました。今回は、優待権利狙いの「つなぎ売り」取引にかかるコストについて見ていきます。

買付手数料等は証券会社によって細かく決まっている

つなぎ売りに必要となる手数料などのコストは次の通りです。

 

(1)現物株式の買付手数料

(2)一般信用新規売り手数料

(3)貸株料

(4)現物の配当金と一般信用売りの配当調整金の差額

 

現物株式の買付手数料、信用取引の新規売り手数料などは証券会社により細かく決められています。また、注意しなくてはならないのは、つなぎ売りで配当の権利取りをした場合です。カブドットコム証券の場合は、現物株式の配当金は源泉税20.315%(※)を差し引かれた状態で支払われます。一方、一般信用売りの場合は配当調整金を100%支払う必要があります。

 

※20.315%は所得税率+住民税率の合計値であり、復興特別所得税率0.315%を含んでいます。(平成25年~平成49年は所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が加算されます)。

 

《例》

配当金が2000円の場合

 

【現物】所得税等20.315%を差し引かれた1594円を受け取ります。

【一般信用売り】配当落調整金100%、2000円を支払います。差し引き406円の負担です。

 

配当金にかかる源泉税(20.315%)については、確定申告をすることで譲渡損(配当落調整金の支払いを含む)と損益通算することができます。特定口座(源泉徴収あり+配当受入あり)かつ配当金の自動受取(株式数比例配分方式)を選択した口座については、現物株式の配当金は特定口座の譲渡損(配当調整金の支払いを含む)と自動的に損益通算され、翌年1月に税金が還付されます。

優待品の価値によっては損してしまうことも・・・

カブドットコム証券の場合、50万円の株価の優待株をつなぎ売りで取引すると、手数料は1095円(※)必要です。

 

※一般信用の貸株料(長期/1.5%)の場合

●優待品が約3000円相当に換算できる場合

優待品約3000円-手数料1095円=1905円分

 

このケースでは優待品の時価が3000円相当であったため、1905円相当分の利益となりました(配当の差額を損益通算した場合)。1095円相当以下の優待品の場合、差額のコスト分だけ損してしまいます。

 

つなぎ売りを使って優待品を得る場合には、手数料がいくら必要で、優待品の価値はどの程度のものなのか、事前に計算しておくことが必要です。

 

なお、優待の権利確定後に建玉を決済する場合、品渡(現渡)をします。誤って反対売買してしまうと、さらに手数料が必要となるので注意が必要です。また、つなぎ売りを制度信用で行ってしまうと、逆日歩というコストが発生する可能性があります。その点にも注意が必要です。

本連載は、2016年1月27日刊行の書籍『勝てる!「優待株」投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。本連載の内容に関して投資した結果については、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

勝てる!「優待株」投資

勝てる!「優待株」投資

藤井 明代

幻冬舎メディアコンサルティング

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