株価の動きに一喜一憂しない「ルール」を作る
特に大きな利益を狙いにいったわけでもなく、メディアなどで情報収集をして株式を買付したのに、途端に株価が下落し、含み損を抱えてしまうことがあります。「タイミングが悪かった」「ついていない」と感じてしまう方もいるでしょう。しかし、敗因は別のところにあるのかもしれません。
初心者の方によく見受けられる傾向に、新聞やニュースなどで業績好調、株価がストップ高まで上昇したといった情報を得て、すぐに株式を買付される場合があります。実際に業績が好調な企業で、決算発表が好感されていても、メディアで報道される頃にはすでに株価はある程度上昇し、過熱気味になっていることがあります。積極的に情報収集しているつもりが、情報にあおられて高値掴みをしてしまうケースです。
株主優待株の場合も同様で、優待実施企業が多い3月、9月はメディアの特集を見て、買付を検討する方が多い傾向にあります。しかし、メディアで特集を組まれた後はすでに株価は上昇してしまっている可能性があり、その後、利益確定の売りに押され、株価が下落してしまうことがあります。
株主優待を目的とした投資であっても、必ずルールづくりが必要です。株式を選ぶ際のルール、売買のルール、損益確定のルールなど取引のタイミングごとにルールを決めていきます。明確なルールがないまま投資をしてしまうと、株価の動きに必要以上に敏感になり、値動きに一喜一憂することになります。
いくつか例を引いてみましょう。まずは、銘柄の選び方です。たとえば、「安定した大型優良企業を割安に買付する」というルールを決めたとします。ルール設定後は投資先を選ぶ際に、新興市場企業や業績が芳しくない企業、配当を継続していない企業などを排除します。
一時的に株式市場で新興市場が盛り上がり、気になる企業が出てくるかもしれません。しかし、そうした情報に翻弄されず、ルールに則った企業の情報だけを拾っていきます。次に株価を確認し、高値圏にあると感じるようであれば、買付は見送ります。
その後、株価の動きを追って買付のタイミングを見計らいます。株価を確認しながら、相場全体に過熱感が出ていないか、同業他社の株価・指標と比較して割高感が出ていないかなどを確認します。
株式を買付した後は、損益確定のルールを決めます。たとえば、株価が「10%以上、上昇したら利益確定する」「10%以上、下落したら損切りをする」といった明確な基準です。売却する基準を決めておけば、株価の短期的な上げ下げに一喜一憂せず、冷静に捉えることができます。
自分に合った銘柄の選定や損益確定のルールは、投資を始める前に決めておくことが大切です。まずはマイルールを決めて、株式投資の軸づくりを考えてみましょう。
個別企業の「業績の好不調」は事前にチェック
株式投資は、急激な相場変動なども起こり得るため、ご自身の投資スタンスやリスク許容度などに合わせて売買ルールを決めて取引することが望ましいものです。
個別企業に投資をする場合は、まず業績をしっかり把握しておくことが重要です。売上、利益などの業績内容をしっかり確認しないで投資をしてしまうと、値下がりしてしまった場合の原因もわからないまま、敗因を次につなげることができません。
企業にポジティブなイメージを持つことは良いですが、イメージだけで買うことはあまりお勧めできません。業績の好不調を事前にチェックしておくことが大切です。
また、保有株が値下がりして含み損を抱えてしまった場合、いつか株価が上がるだろうとずっと持ち続けることもお勧めできません。株価が回復する可能性、あるいは損失が拡大する可能性の両方があります。
しかし、何も行動を起こさないで株式を保有し続けることで、その資金が拘束されてしまい、新たな投資の機会損失になってしまいます。投資資金が限られている方は、特にこの機会損失を防ぐためのルールづくりが重要になってきます。日々のニュースをチェックしていれば、投資対象として魅力的な企業が次々と出てきます。一つの企業にこだわる必要はないのです。
日常で接することができる「投資のヒント」とは?
損失の確定については、損切りラインをあらかじめ、何%下落したら手放すと決めておき、そこに達したら潔く売却するというルールづくりが例として挙げられます。損切りラインをマイナス5%とするのか、10%、20%とするのかは自身の許容範囲で決定します。
また、安定的な大型企業の場合はマイナス5%、値幅の大きい動きの新興市場企業の場合はマイナス20%とするなど、企業の規模や特徴に合わせて決定しておくのも手です。損切りルールを決めることは、他の企業への投資チャンスを逃さない点が大きいですが、精神的にもプラスにつながると考えます。保有株が下落していると、口座内のマイナスが膨らみ、株式投資に対する熱意が徐々になくなってしまう場合があるからです。
株式投資を続けるためにはメンタルを維持することも大切です。投資の世界には「遠くのものは避けよ」という格言があります。意味合いとしては、わざわざ馴染みのないものに目を向けることはないというものです。
上場企業は約3800社もあり、優待を実施している企業はそのうち約1200社あります。その中からあえて知らない企業を研究するよりは、身近で馴染みのある企業の業績を調べるほうが効率は良くなります。また、よく知る企業であれば動向を読みやすいというメリットもあります。
投資のヒントは意外と身近にあるものです。あの商品の売れ行きが良い、愛用している企業のサービスがブレイクしている、最近広告で目にする機会が増えた……そんなところからヒントを得て、企業のことを調べるきっかけにするのが良いでしょう。
先人に学ぶことも重要です。特に日々取引をしているデイトレーダーの方々の投資手法、ニュースの読み解き方などは非常に勉強になります。毎日、自身の資金を動かし、相場と闘っている人々の発言、着眼点、行動はぜひ参考にしたいところです。
個人投資家の中にはネットを通じて情報を発信している人が多くいらっしゃいます。こうした方々の情報は、ブログやツイッターなどのSNSを通じて得ることができます。自分と相場感が合った投資家の方を見つけるのも良いかもしれません。