課税口座との「損益通算」ができないNISA口座
NISA口座とは、少額投資非課税制度のことで、決められた投資額の中で買付した株式や株式投資信託の売却益・配当金が非課税となる制度です。NISA口座を開設すると、毎年120万円の非課税枠が設定されます(2015年までは100万円の非課税枠)。
たとえば、投資金額120万円分の株式を買った場合、株価の上昇で得られる売却益、配当が非課税となります。課税口座での取引ではどちらにも20.315%の税金がかかるので、その節税効果は大きくなります。
NISA口座の投資金額上限は120万円までとなりますが、毎年120万円で最長5年間運用でき、最大600万円の投資元本の利益が非課税になります。
また2016年からは「ジュニアNISA」がスタートし、0歳から19歳までの未成年者もNISA口座を開設することができます。こちらの非課税投資枠は最大80万円となります。
有効に使えば大きな効果をもたらすNISA口座ですが、注意すべき点もあります。まず、株式を一度買付してしまうと、その非課税枠は利用できなくなる点です。
また、NISAはもともと非課税区分での買付けになるため、損失が発生した場合にも、課税口座(一般口座・特定口座)と損益通算ができません。損益通算とは、同商品または、複数の金融商品の利益と損失を相殺する仕組みです。
いくつか事例を見ていきましょう。
《例1》特定口座での取引
特定口座のA銘柄で50万円損失
特定口座のB銘柄で100万円利益
差し引き利益50万円×20.315%=10万1575円
この取引では利益と損失が相殺されています。損益が通算され、差し引き利益の50万円分に課税されます。
《例2》NISA口座&特定口座の取引
NISA口座のA銘柄で50万円損失
特定口座のB銘柄で100万円利益
損失50万円×非課税=税金0円
利益100万円×20.315%=税金20万3150円
この取引では、実質的には例1と同じく、利益は50万円です。しかし、NISA口座は損益通算の対象とならないため、特定口座で100万円の利益があったものと計算され、100万円に対して課税されてしまいます。損失の発生した口座がNISA口座であったことでかかる税金が2倍になってしまいます。
《例3》NISA口座での取引
NISA口座のA銘柄で50万円損失
NISA口座のB銘柄で100万円利益
損失50万円×非課税=税金0円
利益100万円×非課税=税金0円
NISA口座だけで取引をする場合、どちらも非課税となるため、損益の相殺については考慮しなくても大丈夫です。
NISA口座と課税口座で取引をしている場合は口座間で損益通算ができない点に注意してください。
NISA口座の運用期間終了後の3つの移管先
最後にNISA口座の運用期間の終了時期が来た際の例をご紹介します。その際3つに大別され、売却をするか、課税口座へ移管をするか、翌年の新たなNISA口座で運用を続けるかを選択します(図表参照)。
※2015年11月現在の税制に基づいています。制度内容は今後変更される場合がございます。
課税口座へ移管をする場合、移管時の時価が取得価格になる点には注意が必要です。
たとえば、③の例のように、NISA口座において100万円で買付した株式が、5年後に50万円に下落してしまった場合、50万円の時価で課税口座へ移管します。その後、株価が70万円時点で売却した場合、20万円分に課税されてしまいます。
この場合、実際には30万円の損失が発生していますが、20万円分が利益と見なされてしまいます。これは、NISAの非課税期間が終了した際に、損失がなかったものとして移管されてしまうためです。
こうした注意点に留意しながら、NISA口座を上手に活用し、節税メリットを享受しましょう。
【図表 NISA口座の5年後】