前回は、優待権利狙いの「つなぎ売り」取引にかかるコストを説明しました。今回は、つなぎ売りをする際に注意すべき「逆日歩」リスクについて見ていきます。

逆日歩が発生するのは「制度信用取引」の場合

つなぎ売りする際、手数料等のコスト以上に注意したいのが逆日歩です。

 

信用取引には2種類あり、証券取引所などの規定に基づく制度信用取引と証券会社が独自に銘柄や期限を設定する一般信用取引があります。

 

逆日歩が発生するのは前者の制度信用取引です。これは各取引所が選定した銘柄を取引できる信用取引です。制度信用で売建できる銘柄を「貸借銘柄」と呼びます。

 

制度信用では、信用の買い残高に対し、信用の売り残高が大きくなってくると、日本証券金融などの証券金融会社が機関投資家(銀行、保険会社など)や証券会社から株式を借り入れる必要があります。逆日歩はそのための借り入れコストです。

 

信用売り残高が膨らみ、株不足で調達が困難になると、高額な逆日歩がつくことになります。過去の例を挙げると、東京ドーム(9681)が6円の逆日歩をつけました。一見、何ということはないと思う金額ですが、これは1株あたりの逆日歩です。優待品であるジャイアンツ戦のチケットをもらうためには当時、6万株を保有する必要がありました。

 

制度信用取引・つなぎ売りで優待取りを行った場合、36万円の逆日歩を支払うはめになってしまいます。これでは本末転倒です。逆日歩の価格は当日の夕方に公表されるため、事前確認ができない点に注意が必要です。

「つなぎ売り」には逆日歩のない一般信用取引が最適

一方、一般信用には逆日歩はありません。なぜなら一般信用は証券会社が銘柄や取引期間を決めて取引することができる信用取引だからです。この一般信用取引ができる証券会社は一部に限られています。カブドットコム証券の取扱い銘柄数は、他社と比較しても最多の約2000銘柄です(※2015年9月末現在)。

 

一般信用での信用売りは、想定外の「逆日歩」はかからず、コスト増のリスクを回避できるため、つなぎ売りには最適の選択と言えます。

 

なお、一般信用は証券会社の株券の調達状況により常に在庫が変化します。在庫がない場合は一般信用による取引はできないため、つなぎ売りをしたい銘柄の在庫があるか事前に確認する必要があります。

 

つなぎ売りを成立させるには、併せて現物の買い注文を発注し、翌営業日の約定を待ちます。この方法で取引すれば、逆日歩リスクや株価変動リスクを回避して、優待取得の権利を得ることができます。

本連載は、2016年1月27日刊行の書籍『勝てる!「優待株」投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。本連載の内容に関して投資した結果については、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

勝てる!「優待株」投資

勝てる!「優待株」投資

藤井 明代

幻冬舎メディアコンサルティング

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