前回は、本社機能を低税率の国に移転する節税スキームについて説明しました。今回は、「コーポレート・インバージョン」と呼ばれる国際節税戦略をご紹介します。

本社機能は米国のまま、国外に「親」会社を設立

主に米国に本拠を置く多国籍企業グループが、低税率あるいは非課税のタックス・ヘイブンに新しく会社を設立し、その会社が新たな多国籍企業グループの親会社に代わる存在になることを「コーポレート・インバージョン」と称します。この場合、本社機能は米国内の旧グループ本社に残しますが、資本関係上はタックス・ヘイブン等の会社が親会社になるという形です。

 

コーポレート・インバージョンの最大の利点は、タックス・ヘイブン対策税制が適用されないという点にありました。これはあくまで同税制がタックス・ヘイブンにある子会社に適用されるもので、外国にある親会社の留保利益を子会社の所得に合算して課税するものではないからです。

法人税収が低下した米国は新たな対策を実施

コーポレート・インバージョンが増加すれば当然、米国の法人税収が減ってしまいます。米国は既存の税法規定などで対応することを検討しましたが、そこにはどうしても限界がありました。そこで2004年に新しい対策税制を導入することで、新たに米国でもコーポレート・インバージョン実施後の課税を可能としました。

 

米国上院金融委員会では民主党議員によりコーポレート・インバージョン禁止の法案も提出されましたが、共和党が多数を占める下院で同様の動きが出る可能性は乏しいといえます。ただし、オバマ政権のジェイコブ・ルー財務長官は、法人税率を20%台に下げるなど、法案と足並みをそろえた方向性を探っていると考えられます。

 

【図 グローバル企業によるコーポレート・インバージョン】

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

究極のグローバル節税

究極のグローバル節税

古橋 隆之 + GTAC

幻冬舎MC

世界でも高い法人税率の日本。安倍内閣はようやく法人税率引き下げをうたうも、どの程度の引き下げかは不透明だ。さらに一方では、中小企業への徴税強化、高額所得者には厳しい所得税率アップ、相続税の改定もある。 かたやあ…

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