前回は、「レンタルオフィス・スペース」事件の事例から、日本のタックス・ヘイブン対策税制が適用できないケースを紹介しました。今回は、どのような点が争点となったのか具体的に見ていきます。

低税率国で「実質的に」事業を行っているか?

前回の続きです。この事件では、具体的には次の基準が争点になりました。

 

①実体基準

現地において実質的に事業を行うためには、事務所、店舗、工場が必要であると考えられる。それらが現地にあるか否か。

 

②管理支配基準

現地において、事業の管理、支配、運営を子会社が自ら行っていること。具体的には次の諸点が総合的に勘案される。

 

a株主総会、取締役会が現地で開催されている

 

b取引量に見合うだけの従業員が現地で働いている

 

c会計帳簿が現地で作成され保管されている

 

d資金の調達方法など

「立証責任は税務当局にある」との司法判断

この各基準に対しての、裁判所の判断をまとめると次のようになります。また、この判決により、タックス・ヘイブン対策税制を適用するための立証責任が税務当局にある、と判断されたことは大きなポイントでした。

 

①実体基準について

小規模な卸売業であれば、C社のレンタルオフィス、つまり机1台分とパソコン1台のみのスペースであっても十分な固定的施設と考えられ、基準を満たす。

 

②管理支配基準について

税務当局は「B社には従業員がいなかった」と主張した。一方、実態もB社の製品の販売・仕入れを行っていたのはC社からの派遣社員であったが、同時に彼らには一定の裁量権が与えられていた。判決は、そのような場合は、B社が特に直接社員を雇用するまでの必要はないとし、指揮命令系統に関しても、派遣社員への指揮監督はB社取締役としてのSによってなされたものと判断した。

 

ちなみにB社の現地居住役員Sは、B社だけでなく、他の7社の現地役員も兼務し、さらにB社の経営が軌道に乗るまで役員報酬を受け取らないことになっていました。しかし裁判所は、そのような条件であってもSは「常勤役員」の要件を満たしていると判断し、税務当局による「名目的な役員にすぎない」との主張を退けたのです。

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

究極のグローバル節税

究極のグローバル節税

古橋 隆之 + GTAC

幻冬舎MC

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