(写真はイメージです/PIXTA)

2022年2月、イギリスでNFTと暗号資産が「付加価値税詐欺(脱税)の疑い」で押収される事案がありました。この事案は、日本も無関係ではありません。本記事では、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が、「NFTや暗号資産に税金がかかるケース」とその注意点について解説します。

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英で5000ポンドの暗号資産と「NFT」が押収

イギリスで、詐欺事件に関わる調査の一環として、NFTおよび5,000ポンド(約78万円)相当の暗号資産が歳入関税庁(HMRC)に押収される事案が発生しました
※ TechCrunch Japan:英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初(https://jp.techcrunch.com/2022/02/15/british-authorities-seize-more-than-19-million-nft-for-the-first-time-in-a-fraud-case/)

 

はじめに、この事例について解説しましょう。

 

NFTとは「替えがきかない」トークン

 

NFTは、「Non Fungible Token(非代替性トークン)」の略称です。

 

ビットコイン(BTC)などの暗号資産もトークンの一種ではあるものの、個別の暗号資産に色や識別符号など個性があるわけではありません。ビットコイン自体の個性に着目されず、同じ1BTCであればどの1BTCであっても同じ価値を持ちます。

 

現実の通貨で、1万円札でさえあれば他の1万円札と交換をしても、価値がいずれも同じであることから1万円札自体の個性に着目しなくとも取引に支障がないことと同じであると考えるとわかりやすいでしょう。

 

このような性質から、暗号資産などはNFT(非代替性トークン)に対し、「代替性トークン」に区分されます。

 

一方、NFTはインターネット上に存在するそのトークンの唯一無二性を重視するものです。たとえば、デジタル上にのみ存在するデジタルアートをせっかく購入したとしても、簡単にコピーができてしまいます。

 

しかも、現実世界のアート作品であればオリジナルとコピーとの区別は比較的判別しやすいことに対し、デジタル作品のコピーでは品質の劣化も起きず、コピーが容易であることもあり、オリジナル作品とコピー品との区別がつきません。

 

そのため、従来はデジタルコピーが無数に存在すれば、誰が本来のデジタルアートの購入者であるのかなどの証明は難しく、デジタルアート作品に高い価値が付くことはほとんどありませんでした。

 

このような問題を解決するのが、ブロックチェーン技術を応用させたNFTです。

 

NFT技術を活用することにより、購入したデジタルアート作品に唯一無二性のデジタル刻印がなされます。

 

仮にデジタルアート作品自体がコピーされても、刻印までがコピーされるわけではないため、正式に購入した人は正式な購入者であることの証明が可能となります。

 

このような特性を利用したNFTを活用したアート作品や新たなビジネス展開の手法などが次々と生まれています。ただし、昨今「NFTである」という点のみで価値が急騰するケースもあり、暗号資産と同様に投機商品としての色を帯びている傾向にあるといえるでしょう。

 

英の事例でNFTが押収された理由…「VAT詐欺の疑い」

 

イギリスの事例でNFTが押収された理由は、付加価値税(VAT)詐欺(脱税)の疑いによるものでした。記事によれば、このNFTに関して140万ポンド(約2.2億円)以上の付加価値税(VAT)詐欺の疑いがかけられているようです。

 

NFTには何億もの価値が付くこともあり、自己売買を繰り返すことによる価格つり上げや、盗作品などを使った詐欺案件も急増しています。

 

この件に関して、HMRCの経済犯罪担当副局長であるニック・シャープ氏は、「押収事例が暗号資産を脱税に利用すれば金を隠し通せると思っている人たちへの警告になる」と述べているとのことです。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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