(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年4月1日に公開したレポートを転載したものです。

長期・国益的観点からの為替論、円安の維持が必要だ

日経は円安のメリット、デメリットを図15のように整理している。

 

出所:日本経済新聞3月30日付
[図表15]円安の得失 出所:日本経済新聞3月30日付

 

円安は輸出業者にプラス、輸入業者にはマイナスなど、関係者によって利害得失は相反する、よって答えはでない。しかし長期的に日本の国益、日本経済の繁栄を考えればとてもいいことである。

 

国際競争はいかに世界の需要を自国に取り込むかの競争である。円が弱くなれば輸出が増え輸入が減る、また海外移転工場の国内回帰、輸入品の国内生産代替なども起きる。よって日本国内投資と生産が増え所得は増える。

 

かつて超円高の時代はそれが逆回転した。日本企業は海外に工場を移し、国内需要は安い中国品に蚕食された。しかし今、日本企業の(国内で発生する)コストが30年前の半分に低下した。またコロナパンデミック終息の暁には割安になった日本に外国人観光客が殺到するはずである。

 

このように価格競争力回復強化がすべての経済活動の基本である。それには円安が必須であることがわかるだろう。

 

財界の「悪い円安論」はシンプルに誤り

 

メディアでは輸入物価の上昇で家計を直撃する「悪い円安」との議論が多い。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は定例記者会見(3/29)で、輸入物価上昇を通じて原材料を輸入に頼る内需型の企業が苦しむことを念頭に「適切な水準だとはとても思えない」「(円安は輸出企業にメリットが大きいが) 輸出企業だけが日本経済を引っ張っているわけではない」と悪い円安論を展開した。

 

急激な変化は混乱を招くのでスムージングの調整は必要だが、円安という趨勢に抵抗するべきではない。輸入企業は円安を嘆き非難するのではなく、国産代替などの戦略転換を図るべきであろう。

 

積極的金融緩和姿勢を堅持する日銀の断固たるスタンスは国益という観点から心強い。

 

出所:OECD、武者リサーチ
[図表16]日米英独の企業の生産性と物価、労働報酬の推移を比較 出所:OECD、武者リサーチ

 

 

武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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