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改めて認識された「エネルギー安全保障の重要性」
ウクライナ戦争の教訓は、エネルギー安全保障の重要性である。第二次世界大戦の前例を持ち出すまでもなく、エネルギーの遮断は生命線である。プーチン氏はロシアの持つエネルギーのレバレッジを最大限活してウクライナ危機を作り出した。
ロシア依存というEUのエネルギー供給の脆弱性が無ければプーチン氏はウクライナ侵攻を思いとどまっただろう。EUは北海やオランダからのガス産出が減退する中、ロシアガス依存度を高め、いまではその4割をロシアに依存している。
再生可能エネルギーの推進、石炭火力の廃止、原子力開発の停止などにより、天然ガスのロシア依存は高まる一方であった。プーチン氏はEUのロシアへの天然ガス依存の高さゆえに制裁が回避されるとの目論見でウクライナ侵攻に踏み切ったと見られる。
時すでに遅しだが、EUをリードするドイツ・ショルツ政権は政策大旋回に踏み切った。
ロシアによるウクライナ侵攻直後の2月28日、ドイツ議会の特別セッションにおいて、1000億ユーロの軍近代化予算と、軍事予算の増額(対GDP比1.5%から2%へ)が表明された。また北海ルートのパイプラインノルドストリーム2の棚上げも打ち出された。
さらにロシアの国際決済システムSWIFTからの排除、ミサイルと装甲車のウクライナへの援助、石炭と天然ガス備蓄の増強、カタールと米国からのLNG受け入れターミナル2つの建設などが緑の党の同意のもとに打ち出された。
2022年に全廃が決まっていた原発の運転延長や廃止原発の再稼働なども俎上に上ってくるかもしれない。