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円独歩の急落…市場参加者の意表を突く
円を巡るパーセプション(認識)の「根本的転換」
3月の3週間(3/10 115円/ドル→3/28 125円/ドル)でドル円レートは10円の急落となった。
①米国の金融引き締めによる金利差拡大、②日本の貿易赤字転落、③膨大な資金流出(米株投資、債券投資、グローバル直接投資M&A)など、円安要因が山積しており、120~130円への円安予想は方向としては当社の想定通り、しかしこれほどの急激な円安は意外であった。
米国長期金利の2.0% (3/10)までの上昇に対してドル円レートは動かなかったが、以降堰を切ったような円安となった。円はすべての通貨に対しての独歩安であること、「有事の円買い」が起きなかったことなど、円を巡るパーセプション(認識)の根本的転換が起きている可能性がある。
予想以上…購買力平価からのマイナス乖離率
人々が円安進行を甘く見ていたのは、購買力平価を重視したからである。為替レートは基本的に2国間の景況感格差、インフレ格差、金利格差によって循環変動する。そして為替のレベルはおおむね購買力平価に収れんすると考えられている。
日本円の購買力平価(OECD)は2021年で97円、2022年には95円程度とみられている。過去5年ほどの購買力平価からの乖離率は5%程度であったから、円安にも限界がある、乖離率10%とみて110円弱というのが昨年の市場関係者の観測であった。しかし、今回その常識が破られ、マイナス乖離率が20%(116円)~30%(126円)に達した。
購買力平価という水準メドが使えなくなると円安がどこで止まるかがみえなくなってしまう。金利格差とインフレ格差は拡大、貿易収支は悪化と、それぞれ一方向に進んでいく。さらに今後円安が進むとの見通しが優勢となれば、日本からの資本流出が加速する。
唯一の円安阻止要素は日銀の金融引き締め政策のみということになる。突如として円安マグマがたまっていたことが露呈したといえる。