(写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、武者リサーチが2022年4月1日に公開したレポートを転載したものです。

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円独歩の急落…市場参加者の意表を突く

円を巡るパーセプション(認識)の「根本的転換」

 

3月の3週間(3/10 115円/ドル→3/28 125円/ドル)でドル円レートは10円の急落となった。

 

①米国の金融引き締めによる金利差拡大、②日本の貿易赤字転落、③膨大な資金流出(米株投資、債券投資、グローバル直接投資M&A)など、円安要因が山積しており、120~130円への円安予想は方向としては当社の想定通り、しかしこれほどの急激な円安は意外であった。

 

米国長期金利の2.0% (3/10)までの上昇に対してドル円レートは動かなかったが、以降堰を切ったような円安となった。円はすべての通貨に対しての独歩安であること、「有事の円買い」が起きなかったことなど、円を巡るパーセプション(認識)の根本的転換が起きている可能性がある。

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ/出所:財務省、ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表1]ドル円レートと日米長期金利差/[図表2]日本の経常収支と貿易収支推移 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ/出所:財務省、ブルームバーグ、武者リサーチ

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表3]主要通貨の対円レート推移 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

予想以上…購買力平価からのマイナス乖離率

 

人々が円安進行を甘く見ていたのは、購買力平価を重視したからである。為替レートは基本的に2国間の景況感格差、インフレ格差、金利格差によって循環変動する。そして為替のレベルはおおむね購買力平価に収れんすると考えられている。

 

日本円の購買力平価(OECD)は2021年で97円、2022年には95円程度とみられている。過去5年ほどの購買力平価からの乖離率は5%程度であったから、円安にも限界がある、乖離率10%とみて110円弱というのが昨年の市場関係者の観測であった。しかし、今回その常識が破られ、マイナス乖離率が20%(116円)~30%(126円)に達した。

 

購買力平価という水準メドが使えなくなると円安がどこで止まるかがみえなくなってしまう。金利格差とインフレ格差は拡大、貿易収支は悪化と、それぞれ一方向に進んでいく。さらに今後円安が進むとの見通しが優勢となれば、日本からの資本流出が加速する。

 

唯一の円安阻止要素は日銀の金融引き締め政策のみということになる。突如として円安マグマがたまっていたことが露呈したといえる。

 

出所:OECD、武者リサーチ
[図表4]購買力平価とドル円レートの推移-内外価格差と逆内外価格差 出所:OECD、武者リサーチ

 

次ページ「懲罰的円高」が日本にもたらした不遇

本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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