「診療報酬改定」が示す今後の医療業界
DPC制度(※)が導入された背景には、医療費の抑制とともに各医療機関で提供される医療を透明化・標準化したいという厚生労働省の意図もあります。
※DPC制度…疾患に対する手術や処置の組み合わせによって疾病を分類し、その分類別に診療報酬を決めるという仕組み。
国民医療費の膨張は衰える様子を見せず、2020年度の42兆円から2040年度には67兆円まで増加することが予測されています。
DPCルールで診療報酬請求を行うことで患者がどのような診療分類群に該当し、その治療にどのようなアプローチを受けているかが明白になります。
この情報を厚生労働省が蓄積しビッグデータ化していくことで、特定の疾患に対する過不足のない医療行為とは何かを割り出すことが可能になります。
その後、その疾患の標準治療を確立する(あるいはその精度を高める)ことが可能になれば、ますます全国どこでも同じ疾患に対して同じレベルの医療を提供することができるようになっていきます。
この取り組みを繰り広げ、あらゆる疾患に標準治療が設定されていけば、国民皆保険制度のもと、都市部とそれ以外といった地域などで生じる医療ケアのバラツキが小さくなっていくことが期待できます。
どこで受診しても均一の医療ケアを同じ費用で受けられるという制度の趣旨がより徹底されていくのです。
もちろん患者だけでなく病院側にとっても、この方針と意図から得られるものは多くあります。
入院を伴う疾患Aの標準治療が分かっていれば、その患者がベッドを利用する期間の予測を早期に立てることができます。
そして、今患者が使用しているベッドがいつ空きそうかの予測をより正確に立てられるようになれば、病院収益に直結する病床稼働数の精査が容易になります。病棟看護師がベッドを采配する効率の向上が期待できます。
治療が進んでいる実感を得たいからと薬の処方を求める患者がいても、「標準治療ではお薬の量はこうなっているので様子を見ましょう」といった理論による説明も可能になります。
患者の不安な表情と声につい不要とも必要ともいえない薬を処方していた医師にとっては、より的確な医療を提供できるようになるという意味で朗報といえます。
何よりも標準治療の型があれば、医師は回復までの最短コースとなり得る治療計画を患者に提案できるようになります。遠回りをせずに済む結果、大きな話でいえば医療費の抑制に効果が出ることも期待できるのです。
山本 篤憲
株式会社アリオンシステム
代表取締役社長
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