(※写真はイメージです/PIXTA)

母親が亡くなり、実家が空き家になったのを機に、そちらへ生活の拠点を移したいと考えている夫。しかし妻は、便利な都心部の生活から離れ、知り合いのない北関東の夫の故郷へ引っ越すのは気が進みません。都内の大学に通学する子どもの生活も気がかりです。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

思い入れがある土地でも…資産の一極集中はリスク

鈴木さんの夫は自分が生まれ育った場所に愛着があり、そこを終の棲家としたい気持ちがあるのでしょう。しかし、鈴木さんとお子さんには、これまでなじみのない場所です。これからまだ先の長い生活を考えると、夫の考えは、家族全員にとっていい方法ではないかもしれません。

 

そこで筆者は、選択肢のひとつとして、実家を売却し、都市圏の物件に買い替える方法もあると提案しました。

 

筆者は、価値の低いところに不動産をまとめるより、より価値の高いところへ分散して保有することをお勧めしています。鈴木さんの夫の場合、以前に父親から相続した収益不動産も、相続予定の実家と同じ地区にあることから、同じエリアに集中して不動産を保有するより、立地を分けたほうがリスク分散になると説明しました。将来の子どもの相続までを見据えた場合、その方がより安全だといえます。

 

鈴木さんにそれを説明すると、納得した様子でした。

 

「そうですね、子どもの相続を考えれば、その方がメリットがありますね…」

 

とはいえ、住居は家族の最重要課題です。よく話し合い、後悔のない選択をしていくことが必要です。

 

「確かに夫が育った場所ではありますが、夫だって東京の生活のほうがずっと長いわけですし、大学や仕事で知り合って親しくしている友人や知人もたくさんます。そう考えれば、このタイミングであえて実家に戻る必要はないのかなと…。財産の価値を維持することも考えて、一度みんなで話し合ってみます。また改めてご連絡します」

 

鈴木さんはそういうと、筆者の事務所をあとにしました。話し合いはこれからですが、ご家族全員が納得できる着地が見出せるよう、応援する気持ちで見守っています。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

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曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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