
相続した実家不動産をいざ売却しようとしたところ、住宅ローンによる抵当権の登録抹消手続きがなされていないことが判明。手続きしようにも、必要な書類が見当たらない…。書類には法律上再発行できないものがありますが、その場合は売却できないのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。
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実家は「抵当権」の抹消がされていなかった
相談内容
父親が亡くなり、横浜市内にある一戸建ての実家を相続しました。
不要なため売却しようとしたところ、かなり昔に父親がローン返済したはずの銀行の抵当権がそのままになっていると指摘されました。
銀行に問い合わせたところ、完済時に抵当権を抹消する登記に必要な書類は送付しているとのことでしたが、実家をいくら探しても見当たりません。
父は書類の管理や整理が苦手だったため、恐らく紛失したものと思われます。
不動産業者に尋ねたところ、抵当権を消さないと売却できないといわれました。
一体どうしたらいいのでしょうか。
必要書類を紛失しても、抹消登録する方法はある
回 答
抵当権などを消す、つまり抹消登記には下記のような書類が必要になります。
①銀行(金融機関)が抵当権を解除・放棄・弁済したと認める証書
②銀行(金融機関)側の権利証(登記済証)または登記識別情報通知
③銀行(金融機関)の代表者の委任状
このなかで「登記識別情報」や「権利証(登記済証)」の再発行は、そもそも法律で認められていません。また、銀行の証書の再発行も、かなり時間がかかるのが現実です。
しかし、これらがないから抵当権を抹消できないというわけではありません。
主に次の2つの方法があります。
①事前通知制度
登記識別情報・登記済証を添付せずに登記を申請しますが、その代わりに銀行(金融機関)の代表者の委任状に、銀行(金融機関)の実印を押印して、印鑑証明書を添付します。
後日、法務局より通知書(登記申請の内容が真実かどうかを問い合わせるもの)が、銀行(金融機関)の代表者本店に届くので、2週間以内に真実である旨の返送をすれば、登記が完了します。
『登記済証(権利証)を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?
事前通知制度とは?(法務省ウェブサイト)
②資格者代理人(司法書士等)による本人確認情報の提供
司法書士が、銀行(金融機関)の代表取締役や、登記された支店長など面談し、本人確認情報を作成します。これを登記識別情報・登記済証の代わりに添付書面として登記を申請します。
登記になじみのない一般の方が考えても、②のほうがハードルが高いことはすぐわかりますね。このため、実務では通常、①の事前通知制度を用います。
事前通知制度で手続きを行うことが多く、登記完了までの期間が、通常より1~2週間は長くかかります。また、相対取引である不動産売買では安全性を担保できないので、不動産売買の当日にこの事前通知制度を用いることはまずありません。そのため、不動産の売買を控えている場合は、余裕をもって抵当権抹消登記に取りかかる必要があります。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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