豪ドル相場に資源価格と比べた割安感生まれる
ウクライナ情勢の悪化を契機に、為替市場では資源価格と豪ドル相場の関係に改めて注目が高まりつつあります。
2022年に入って豪州の主要資源である鉄鉱石やLNG、石炭の価格上昇が再び顕著となるなか、資源価格と豪ドル相場の乖離が拡大傾向にあります[図表5]。これは足元の豪ドル相場に資源価格と比較した割安感が生まれていることを示唆しています。
資源高により豪州と日本の貿易収支格差が拡大
豪州と日本の交易条件を比較してみると、2020年以降、豪州では資源価格(輸出価格)の上昇を追い風に交易条件が改善基調にある一方、日本では原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇が輸入価格を押し上げる要因となり、交易条件の悪化が続いています[図表6]。
資源価格の上昇を契機にした豪州と日本の交易条件の格差が拡大していることは、足元で豪州と日本の貿易収支の方向性の違いにも影響をおよぼしています。
豪州では2022年1月の貿易収支(財ベース)が+132億豪ドル(約1.1兆円※)と過去最高の黒字額を更新した一方、日本の2月の貿易収支は-1兆314億円と2020年4月以来の赤字額となりました[図表7]。
※ 為替換算レート:1豪ドル=85円
このように豪州と日本の貿易収支の格差が一段と拡大していることは、貿易取引による実需面から豪ドル高・円安圧力が生まれやすいことを示しています。
今後は豪州準備銀行の金融政策も市場の焦点に
3月16日には米国の連邦公開市場委員会(FOMC)が0.25%の利上げを決定したことで、今後は豪州準備銀行(RBA)の金融政策にも市場の注目が集まりそうです。
3月17日に公表された豪州の2022年2月分の雇用統計では、失業率が2008年8月以来となる4.0%へ低下し、雇用環境の改善が市場予想を上回るペースで進んでいることが示されました[図表8]。
今後、労働市場のひっ迫が賃金上昇を通じてインフレ圧力に繋がれば、RBAによる利上げを後押しする要因になると考えられます。
先物市場では当面は米国の利上げが先行するものの、2022年後半から2023年にかけてはRBAの利上げのキャッチアップが進むと見込まれています[図表9]。
和泉 祐一
フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社
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