「受験は子どもの未来の選択」である
我が家の場合も、第一志望校を最終的に決心したのは息子でした。目標を高くもちたい、その思いを理解して応援すると決めましたが、隠してはいても、やはり少し不安はありました。
中学生が自分で答えを出すということは、簡単なことではありません。でも、本人が納得して出した一大決心を、私たちも応援するしかないと、すぐに腹をくくりました。決めたら、あとはやるだけ。息子の通う高校、息子の人生ですから、絶対に本人が納得して選ばなければなりません。
なぜなら、うまくいくとは限らないからです。
私たち人間は、失敗してこそ成長できる。失敗を受け止め、次に進もうとする思考と強さが大切です。しかし、自分で選択した判断の結果でない場合、そのようなマインドにはなりにくい。親が決めた選択、親の勧めで渋々受け入れた選択は、親のせいにできてしまう。「あのとき、親がこう言ったからこうなった」と。壁にぶつかったときに受け止められず、言い訳をして、失敗を自分以外の人のせいにできてしまうのです。
自分で選択する経験を積み重ねた子どもが大人になったとき、壁にぶつかっても乗り越えていく力がおのずとついています。子どもたちは、自分が決めた選択の結果は受け入れ、責任をもつようになっていくでしょう。困難にぶつかったときに、この積み重ねがとても大切だと思います。
自分で小さな選択を積み重ねることは、たとえうまくいっても、うまくいかなくても、将来、自力で困難や局面を乗り越える力になっていく。それが「子どもを育てる」ということ。決断や体験を積ませることで、誰かのせいにせずに生きていく力を身につけられます。これこそが、親が子どもに与えられる大切な教育なのです。
とはいえ、中学生がひとりで考え、進路を選択することは容易ではなく、突き放せばよいという話でもありません。我が子を思い、その将来を心配する親心は万国共通です。
進路選択の際に、親としてできることは、
●選択肢を用意する
●一緒に考えてあげる
●自分の経験談を話して聞かせる
最も大切なことは、「受験は、子どもの未来のための選択」だということを忘れずに、人生の先輩としてアドバイスすること、自分で考え、自分で選択できるような環境を整えてあげることです。
私は、受験が近づき黙々と勉強する息子の背中を見ながら、都立国立高校を第一志望にした息子の選択は正しかったのだと確信しました。合格も不合格も、まだ何の結果も出ていませんが、それでも「高い目標に挑戦することを自分で選び、努力すること」を、彼は実践していました。
私たち親がやらせているわけではない、塾の先生にやらされているわけでもない。気がつけば、自ら考えて、必要な努力ができる人間になっていたのです。受験が近づくにつれ、この「塾なし受験」の大きなメリットを強く感じながら、私たち夫婦は、入試日までサポーターとして息子を応援し続けました。
塚松美穂
ライター・教育アドバイザー
学習支援コーディネーター